『ねじれた文字、ねじれた路』トム・フランクリン [新刊!]
前にポケミスを訳したのは1990年『闇に吼える』テッド・ウッドだから、もう20年もたつ。しかもCWAのダガーのショートリストにはいるという、これまたはじめての快挙! まことにうれしい。すぐれた文章の作品は、訳していてとてもやりがいがある。それだけに難しいのだけれど、漢語を不用意に使わないようにして、朗読にたえるようにしたつもりだ。トム・フランクリンの作品には、独特の香気があり、またアメリカ南部の荒々しさとは無縁な男たちが出てくる。マッチョなばかりが男ではなく、やさしさや忍耐も男らしいのだ。解説を川出さんにお願いしたので、刊行されたらもうひとつのあとがきを書こう。主人公が乗っているジープ(2WDのDJ型と思われる)や、マーリン・ライフルなどについて……。
『レッド・ドラゴン侵攻! 南シナ海封鎖』ラリー・ボンド [新刊!]
中国のアジア侵略を描く四部作の第二部。海南島の基地からベトナム上陸を狙う中国海軍部隊を、米軍の秘密軍事顧問に率いられたベトナム海兵隊チームは阻止できるのか? 米軍は、中国との全面戦争を怖れて干渉できない。だが、米海軍駆逐艦〈マッキャンベル〉は、完全と海上封鎖に挑む……奇策につぐ奇策。いよいよおもしろくなってきた!
レッド・ドラゴン侵攻!第2部 南シナ海封鎖〈上〉 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)
- 作者: ラリー・ボンド
- 出版社/メーカー: 二見書房
- 発売日: 2011/08/22
- メディア: 文庫
レッド・ドラゴン侵攻!第2部 南シナ海封鎖〈下〉 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)
- 作者: ラリー・ボンド
- 出版社/メーカー: 二見書房
- 発売日: 2011/08/22
- メディア: 文庫
『オバマの戦争』ボブ・ウッドワード [新刊!]
ウサマ・ビンラディンの発見と殺害の裏には、オバマ政権の地道な活動があった。大統領に就任したオバマは、アフガニスタンをことの中心に戻し、パキスタンと関連させた戦略を進めて、包囲網をせばめていった。今回の強襲作戦には、むろんパキスタン政府への根回しがあった。そういった軍事――「オバマの戦争」――だけではなく、本書にはオバマ政権を理解する鍵を握る情報がこめられている。オバマの理知的な手法を理解しておらず、失敗を重ねている日本政府上層部は多い。ブッシュ政権のアメリカとはちがうアメリカがここにある。アメリカは、大統領によって豹変する国なのである。それにしても、インタビューの最後にオバマがウッドワードをからう場面はおもしろい。オバマが「わたしの情報源よりもすごい情報源があるみたいだな」と皮肉り、「国家情報長官になろうと思ったことは? それともCIAか?」とたずねる。ウッドワードは笑みで応じるが、ウォーターゲート事件を暴露したときからずっと、ウッドワードには情報機関の影がある。海軍士官のころは、国防総省で情報関係の仕事にたずさわっていたし、《ワシントン・ポスト》の上司は元CIA局員だった。『ディープ・スロート』でウッドワードは、その後重要な情報提供者になるFBI副長官とホワイトハウスで「偶然に」出会ったといっている……だが、真実はわからない。『ディープ・スロート』は、その副長官が物故してから書かれた本である。とにかく、ウッドワードの本には、ジョン・ル・カレのスパイ小説を読むように行間を読む楽しさがある。むろん事実のみが描かれているが、人物関係も情報も錯綜し、けっして単純明快なノンフィクションではない。本書も、アメリカで出版されたときには、「こんな秘密をばらしていいのか」と、たいへんな物議をかもした。
大幅増刷決定!(6・30現在)
大幅増刷決定!(6・30現在)
『決断のとき』ジョージ・W・ブッシュ [新刊!]
今回の大災害ほど、リーダーシップが問われたことは、かつてなかった。逆にいえば、リーダーシップの不在、指揮系統の不在が明らかになってしまった。ジョージ・W・ブッシュは、ゆくりなくも、9・11同時多発テロ、未曾有の金融危機、ハリケーン・カトリーナによる災害を経験した。その政策にはさまざまな批判もあるが、危機に際してリーダーシップを示した大統領であることはたしかだろう。アメリカという国は、どうやらリーダーシップを生み出す国でもあるらしい。大統領がアメリカをつくると同時に、アメリカが大統領をつくる。日本はどうなのか? 吉田学校なきあと、二代目、三代目のおぼっちゃまたちが、国を荒らしつづけてきた。万民が平等の金太郎飴的な状態は、リーダーシップを生みづらい。しかし、ヒトラーのような危険なリーダーシップもある。日本の現状を考えるにつけても、『決断のとき』は、学ぶべきところの多い本だ。この題名にしてこの本、心して読まなければならない。なお、諸事情により出版が遅れ、前回の新刊案内が空予告になってしまったことをお詫びします。
『決断のとき――ブッシュ大統領回顧録』ジョージ・W・ブッシュ [新刊!]
アメリカという国はおもしろい。アメリカが大統領をつくり、大統領がアメリカを作る。21世紀初頭は、アメリカにとって大きな変転のときだった。そういう時代の大統領は、さまざまな厳しい決断を迫られる。そして歴史をつくってゆく。9・11同時多発テロがこの政権のひとつのモチーフになったことはたしかだが、ブッシュはそのほかにも特色のある政策を打ち出している。それには超党派の法案成立の努力が欠かせなかった。たしかな政策もなく足の引っ張り合いばかりしているどこかの国の政党の上層部には、精読してもらいたいものだ。
『南極の中国艦を破壊せよ』カッスラー&ダブラル [新刊!]
大地震や台風など、自然の力の前には、人間はほとほと無力だと思う。まだ被害の全貌は明らかになっていないが……たいへんな事態になった。むろん自然破壊が直接の原因ではないのだろうが、異常な暑さだった夏といい、大雪といい、地球になにか無理がかかっているのだろうか。被災者のみなさまの今後の無事、なくなったかたの冥福を祈りたい。
今回の舞台は南極である。中国とアルゼンチンが、南極大陸の一部の領有権を主張し、資源開発をはかろうとしていることが発覚、オレゴン号はこれを阻止すべく出動する。鄭和の大航海の直後、東をめざした中国艦隊の行き着いた先は……そこで一隻を見舞った悲運が現代によみがえる。
今回の舞台は南極である。中国とアルゼンチンが、南極大陸の一部の領有権を主張し、資源開発をはかろうとしていることが発覚、オレゴン号はこれを阻止すべく出動する。鄭和の大航海の直後、東をめざした中国艦隊の行き着いた先は……そこで一隻を見舞った悲運が現代によみがえる。
『フォールト・ラインズ』ラグラム・ラジャン [新刊!]
金融危機を予見し、2005年のジャクソン・ホール・シンポジウムでそれを発表した気鋭のエコノミストが、世界経済を斬る! 世界経済には無数の断層線(フォールト・ラインズ)が生じていて、地震のごとく、巨大な圧力を生み出し、あらたな経済危機を引き起こすおそれがある。本書は「百年に一度」の悪夢を分析し、さらにそれを予防する処方箋を提起する。フィナンシャル・タイムズ紙のビジネス・ブック・オブ・ザ・イヤー2010受賞作! いま、ほんとうにスリリングなのは経済だ。発売早々、大好評! 各書店でランクインしています!
☆ネットに載せてあるNotesについては翻訳・編集作業中。出版日程の関係もあり、タイムラグが生じてしまいましたご寛恕ください。
☆ネットに載せてあるNotesについては翻訳・編集作業中。出版日程の関係もあり、タイムラグが生じてしまいましたご寛恕ください。
『レッド・ドラゴン侵攻!』ラリー・ボンド [新刊!]
昨今の中国の拡張主義には、目に余るものがある。尖閣諸島など、中国の古い地図では、たしかに日本領としているのに、なにをいまさら――である。しかし、中国の理屈では、朝鮮は朝貢していた属国であり(金正日はたしかに倉皇とはせ参じていることである)、安南と呼ばれていたベトナムなどの東南アジア諸国も中国の一部なのである。だが、レアアースはともかくとして、現在の中国は石油資源にもとぼしく、食糧難も懸念されている。そんななか、肥沃な農地と豊かな石油資源をもとめて、中国人民解放軍がベトナムに侵攻した。アメリカはこれに深刻な懸念を抱くが、大部隊を派遣する時間の余裕もなく、ましてそれをベトナム側が受け入れるはずもない……そこで奇策を講じ、進軍を阻む作戦が立案された。そして、ベトナム軍へ顧問が派遣される。さらに、たまたま現地にいたCIA工作員が、人民解放軍の蛮行をあばく画像を手に入れるために、人民解放軍が雲霞のごとく押し寄せる国境地帯をめざす。欧米の経済と複雑にからみあった中国のごり押しを許さないために、国際社会にその証拠を示す必要がある……。久しぶりの痛快な軍事スリラー巨編だ。それに、売れてます!
レッド・ドラゴン侵攻! 〈上〉 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)
- 作者: ラリー・ボンド
- 出版社/メーカー: 二見書房
- 発売日: 2010/12/17
- メディア: 文庫
レッド・ドラゴン侵攻! 〈下〉 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)
- 作者: ラリー・ボンド
- 出版社/メーカー: 二見書房
- 発売日: 2010/12/17
- メディア: 文庫
『ヒトラー第四帝国の野望』カークパトリック [新刊!]
めっぽう面白い歴史ミステリー!&ノンフィクションだ! ヒトラーの第三帝国崩壊直前にニュルンベルクから消えた「神聖ローマ帝国の秘宝を探せ!」という指令を受けて、一介の米軍下級将校が謎を解きほぐしてゆく。しかも、期限は三週間――緻密な聞き込みと現地調査で、主人公ウォルター・ホーン米陸軍中尉は、秘宝の行方を追った! これは実話であり、結果は歴史的事実として残っている。しかし、ストーリーはホーン中尉の視点で進み、読者はいながらにして、この歴史探偵の行動や推理を追うことができる。じつによく書かれた本で、われながらゲラを読むのが楽しかった。ついでながら、ナチスドイツとオカルトの結びつきについては、以下のような参考資料もある。
『エルサレムの秘宝を発見せよ!』カッスラー&ダブラル [新刊!]
クライブ・カッスラーのこの「オレゴン・ファイル・シリーズ」は、ほどほどに歴史がからませてあるのが持ち味になっている。今回は、地中海で猛威をふるった「コルセア」と呼ばれる北アフリカのイスラムの私掠船が登場する。欧米側はこれをバーバリの海賊と呼んでいた。帆船時代の手に汗握る冒険小説といえば、C・S・フォレスターのホーンブロワー・シリーズが有名だが、その戦闘場面を髣髴させる海戦が冒頭からくりひろげられる……しかも、なんと大団円ではオレゴン号が……昔の帆船の片舷斉射のごとく、軍艦に一騎打ちを挑む……そして最後にあばかれたいにしえの真実とは……。