大英帝国衰亡史 中西輝政著 [本・読書]
歴史のツボを心得ているとてもよい本だ。たとえばレンド・リース法(武器貸与法が誤訳であることも指摘されている)がイギリスを縛る罠で、そのためにイギリスの貿易が禁じられ、衰亡につながったことが説明されている。イギリスは本土防衛戦に勝利したが、外貨準備は底をついていた。「帝国が千年つづいたとしても、あれが帝国最良のときであったと語られるようにふるまおう」とチャーチルは演説したが、それは帝国最期のときでもあった……。この訳にも感銘を受けた。Their Finest Hourはしばしば「もっとも輝かしいとき」と訳されているが、finest は堂々と、立派に、善戦したことを指している。この時機が「輝かしい」はずがないではないか。