〈亡国のイージス〉 [映画]
自衛隊が協力しているだけあって、艦艇や戦闘機などの美しい映像も楽しめるし、ちゃちではない映画になっている。ただ、イージス艦のCGはちょっとおそまつなところもある。原作を読んでいないと、流れは若干わかりにくいかもしれない。ちょっと疲れたおっさんの下士官を演じる真田宏之がとてもいい。しかし、髪はちょっと長いのではないかと思ってしまう。それに、寺尾聡副長のあの鬚はいかがなものか? 海上自衛隊が、ああいう無精鬚みたいなものを許しているとは思えないのだが……。まあ、長髪の特攻隊員キムタクよりはずっとマシかもしれない。いちおう見ておいてもいい映画だ。ただ、本のほうがずっとおもしろいかもしれないよ。
〈廃市〉 [映画]
〈アビエイター〉 [映画]
最近見た映画(といってもDVDだが)のなかでは、もっともエキサイティングだった。金と命と名誉をかけたハワード・ヒューズの闘いは、血を沸き立たせる。よくも悪くも、ヒューズの生き方や業績は、その後のアメリカ人のマインドセットに大きな影響をあたえたのではないか――ハリウッドの超大作志向、軍用機や旅客機の大型化、そして自由競争。
ジーン・ハーロウ、キャサリン・ヘップバーン、エヴァ・ガードナーといったハリウッド女優も登場するが、ヒューズはけっしてプレイボーイであったのではなく、彼女たちとは一種のソウルメイトであったことがうかがえる。それにしてもディカプリオはすごい役者だ。
――物語は1947年11月2日、世界最大の飛行艇ヒューズH‐4ハーキュリーズの初飛行で終わっている。「ジェーンズ航空百科事典」によれば、ハーキュリーズはこの日、ロサンジェルス港を1マイル飛行し、その後は二度と飛行していないという。その後、働き者の軍用輸送機ロッキードC‐130が「ハーキュリーズ」を襲名していることは周知のとおりである。「地獄の天使」の撮影シーンも含め、飛行機好きにとっても見逃せない映画だ。
マーティン・スコセッシ監督、「ムーンライト・セレナーデ」ではじまるエンディングクレジットの尾っぽにブルースをくっつけているので、かならず最後まで見るように。
ジーン・ハーロウ、キャサリン・ヘップバーン、エヴァ・ガードナーといったハリウッド女優も登場するが、ヒューズはけっしてプレイボーイであったのではなく、彼女たちとは一種のソウルメイトであったことがうかがえる。それにしてもディカプリオはすごい役者だ。
――物語は1947年11月2日、世界最大の飛行艇ヒューズH‐4ハーキュリーズの初飛行で終わっている。「ジェーンズ航空百科事典」によれば、ハーキュリーズはこの日、ロサンジェルス港を1マイル飛行し、その後は二度と飛行していないという。その後、働き者の軍用輸送機ロッキードC‐130が「ハーキュリーズ」を襲名していることは周知のとおりである。「地獄の天使」の撮影シーンも含め、飛行機好きにとっても見逃せない映画だ。
マーティン・スコセッシ監督、「ムーンライト・セレナーデ」ではじまるエンディングクレジットの尾っぽにブルースをくっつけているので、かならず最後まで見るように。
〈トスカーナの休日〉 [映画]
〈二人日和〉 [映画]
〈プロヴァンスの贈り物〉 [映画]
あれれ、内容は……ピーター・メイルの名が原作としてクレジットされてますが、お話はまったく別。やり手のディーラーが、おじさんの残したプロヴァンスのシャトーへ行って、最初は売ろうと思ったんだけど、少年時代が懐かしくなったり、いい女に出会ったりして、ちょっと気が変わる、という物語。ワインが出てくるので、ついワインを飲みたくなり、いまはヨーロッパで絶滅したカルメネールという幻の品種の葡萄とシラーズによる「テラ・マター」をあけた。チリ・ワインというと馬鹿にする向きがあるが、これはすこぶるうまい(そんなにお安くはないですが)。
おっと映画の話だった。リュック・ベンソンの「TAXI」シリーズでおなじみマリオン・コティヤールがお尻をまくったりするお色気場面のサービスもあるし、ユーモアたっぷりだから、明るく楽しめます。プロヴァンスは無理としても、勝沼の葡萄畑が買いたくなったぞ。
おっと映画の話だった。リュック・ベンソンの「TAXI」シリーズでおなじみマリオン・コティヤールがお尻をまくったりするお色気場面のサービスもあるし、ユーモアたっぷりだから、明るく楽しめます。プロヴァンスは無理としても、勝沼の葡萄畑が買いたくなったぞ。
〈フラガール〉 [映画]
〈スイング・ガールズ〉は複数なのに、〈フラガール〉はなぜ単数なのか、と突っ込みたくなるのはさておき、なかなか泣かせるいい映画です。昭和40年が舞台だから、高校生ぐらいの主人公たちは、まんず同時代人なのだね。日本の庶民がまだ貧しくて、なんとかがんばろうとしていた時代――バスも最初はボンネットバス、とレトロな味わいもよいのです。
前半はよく台詞が聞き取れないのだが、これは松雪さんとおなじて、最初はなまりに慣れないせいかもしれない。小面の貌の蒼井優と、ちょっぴり般若面の松雪泰子の対比もよいのだね。
いまだに生き延びて繁盛しているハワイアンズもすごいぞ。
前半はよく台詞が聞き取れないのだが、これは松雪さんとおなじて、最初はなまりに慣れないせいかもしれない。小面の貌の蒼井優と、ちょっぴり般若面の松雪泰子の対比もよいのだね。
いまだに生き延びて繁盛しているハワイアンズもすごいぞ。
王の男 [映画]
韓国の時代劇は、厳しい階級制度がもたらす悲劇を描くものが多い。しかし、そういう状況での庶民のたくましさには感動する。かつて山本周五郎は、「慶長五年の何月何日に、大阪城でど、ういうことがあったか、ということではなく、そのときに道修町の、ある商家の丁稚が、どういう悲しい思いをしたか、であって、その悲しい思いの中から、彼がどういうことを、しようとしかということを探求するのが文学の仕事だと私は思います」といっている。
「春香伝」や「酔画仙」そしてこの「王の男」を見て思うのは、そういう視点である。織田信長も豊臣秀吉も、英雄であるかもしれないが、強大な権力を握って大量の殺戮をおかしている。国というものは、そういった権力者が必要であるのかもしれない。さもないと、他国に侵されるからである。しかし、イラク戦争のような現実があるなか、それらの人物を主人公とする大河ドラマのたぐいを気楽に見ていられないのは事実である。
前置きが長くなったが、「王の男」は、李朝時代、美貌の青年といかつい青年の二人組の芸人が、王をめぐる陰謀に巻き込まれる物語である。二人は綱渡りなどの芸をしながら、権力者を揶揄する卑猥で滑稽な劇を演じる。それが王の側近の目に留まり、ある意図をもって、二人を含む芸人たちは王宮に送り込まれるのだが……。
「春香伝」や「酔画仙」そしてこの「王の男」を見て思うのは、そういう視点である。織田信長も豊臣秀吉も、英雄であるかもしれないが、強大な権力を握って大量の殺戮をおかしている。国というものは、そういった権力者が必要であるのかもしれない。さもないと、他国に侵されるからである。しかし、イラク戦争のような現実があるなか、それらの人物を主人公とする大河ドラマのたぐいを気楽に見ていられないのは事実である。
前置きが長くなったが、「王の男」は、李朝時代、美貌の青年といかつい青年の二人組の芸人が、王をめぐる陰謀に巻き込まれる物語である。二人は綱渡りなどの芸をしながら、権力者を揶揄する卑猥で滑稽な劇を演じる。それが王の側近の目に留まり、ある意図をもって、二人を含む芸人たちは王宮に送り込まれるのだが……。
〈スウィング・ガールズ〉 [映画]
北京でやるオリンピックなど見たくない、というときに、ちょうどケーブル・テレビでやっていたのは、きわめて好都合であった。スポコン物といえばいえるのだが、バンドの連中は落ちこぼれだし、ユーモアたっぷりなのが、なんといっても楽しい。スポコンをマジメにやると軍国主義になってしまうから、重いコンダラはいけねーのだ。だいいち、懸垂とかうさぎ跳びが筋肉を硬くし、害があることは、よくわかっている……って関係ないお話ですが。
〈ブラス〉もだけど、音楽映画は泣けるねえ。〈ブラス〉では、「アランフェス」にじんときた。この映画では、「ムーンライト・セレナーデ」がお涙ちょうだいの一曲。女子高生たちのランボーな会話もなかなか楽しい。暑い夏、おすすめの一本。
〈ブラス〉もだけど、音楽映画は泣けるねえ。〈ブラス〉では、「アランフェス」にじんときた。この映画では、「ムーンライト・セレナーデ」がお涙ちょうだいの一曲。女子高生たちのランボーな会話もなかなか楽しい。暑い夏、おすすめの一本。
ブライアン・ジョーンズ ストーンズから消えた男 [映画]
怪死を遂げたブライアン・ジョーンズの、すさんだ人生の部分だけを取りあげた映画で、「ストーンズから消えた」いきさつはわかるものの、ストーンズの音楽にどうかかわっていたかは、まったく掘り下げられていない。ミックはキースは、「そっくりさん」だが、存在感が薄い。ストーンズの音楽に興味のある向きは見ても時間の無駄。
ところで、XHKがときどき流すエド・サリバン・ショーの映像で、ストーンズについてのテロップがかならず「ビートルズに対してストーンズは不良のイメージで」という趣旨の言葉になっているが、これはやめてほしい。ストーンズのメンバーのほうが、ビートルズのメンバーよりも、教育とクラース(階層)ではずっと上なのだ。「不良」はむしろビートルズのほうだろう。
ところで、XHKがときどき流すエド・サリバン・ショーの映像で、ストーンズについてのテロップがかならず「ビートルズに対してストーンズは不良のイメージで」という趣旨の言葉になっているが、これはやめてほしい。ストーンズのメンバーのほうが、ビートルズのメンバーよりも、教育とクラース(階層)ではずっと上なのだ。「不良」はむしろビートルズのほうだろう。
ブライアン・ジョーンズ ストーンズから消えた男 コレクターズ・エディション
- 出版社/メーカー: エイベックス・トラックス
- メディア: DVD