『虎の城『火坂雅志 [本・読書]
この作家の短いあとがきが好きだ。本書では、「激動する乱世のなかで、けっして初心を忘れず、強い意志を持って、いかに自己変革していくことができるか。それは多くの人たちの課題でもあると同時に、私自身の生涯にわたる課題でもある」と結ばれている。そして、それが藤堂高虎のテーマ、本書のテーマになっている。他の作家の『利休にたずねよ』では、どうしても主人公である利休に好感が持てなかった。だが、火坂雅志の歴史小説にその心配はない。それに、この『虎の城』、あるいは『天地人』よりもテレビドラマ向きであるかもしれない。大河ドラマは「ご当地」にこだわる傾向があるけれど、領地(支店)をあちこちにかえ、それでも成功をつづけた藤堂高虎の物語は、またちがう角度からとらえることができるのではないか。ところで、火坂氏はいつも和服姿で、これにも好感が持てるんですよね。