ことばの美学54 辞書をひく感覚 [雑記]
なにしろ冒険小説やハイテク軍事スリラーは、世界をまたにかけている。最近訳したものにも、セルビア・クロアチア語やベブライ語がでてきた。ヘブライ語は前から辞書を買ってあって、こんなもの読めるかいなと思っていたのだが、意外や意外、アラビア語の知識が役に立った。むろん、おなじアブラハムさんの子孫とはいえ、文字はまったくちがう。だが、母音文字がアレフのほかにないという点や、子音文字のならびが、若干似ている。実は、子音(これに母音記号がつく)だけの辞書というのは、ひくのが楽なのだ。katabaはアラビア語で「書く」を意味するが(じっさいには三人称過去)、辞書ではktbとひけばいい。これに母音文字がくわわると、順列組み合わせがはるかに増える。単純にいって、カキクケコ×タチツテト×バビブベボとなるわけだから、125通りを見なければならない。ヘブライ語も、文法はむろんわからないながら、単語ぐらいはひけると判明した。いっぽう、セルビア・クロアチア語は、ロシア語に似た言葉もあるから、そちらから攻めていくことも可能だ。言葉も文化も、国境線でくっきりと区切られているわけではない。
CDエクスプレス セルビア語・クロアチア語 (CDエクスプレスシリーズ)
- 作者: 中島 由美
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2002/06
- メディア: 単行本