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『中国の大盗賊・完全版』高島俊男、『ロシアについて』司馬遼太郎 [本・読書]

 いま、この2冊を読むと、じつに面白い。「共産党の中国とは盗賊王朝である」と『中国の大盗賊』オビにある。いや、中国の悪口をいうのではない。「日清戦争で日本が尖閣諸島を盗んだ」というロジックの裏には、元は中国を盗んだ、清は中国を盗んだ。中国はモンゴルとチベットを盗んだ。これは世界史上あたりまえのことである。だが、いまはオレのほうが強いのだからよこせ、という心理がある。たしかにいま、盗み、盗まれる流れは巧妙になっていて、先進国は金融でそれをやっているわけだ。かつて大英帝国は、私掠船というものを使って公然たる盗みをやっていた。ソマリアの海賊と変わりはしない。ただ、いちおうの文明国というものは、ナイフを持たずに戦うものだから、いまの中国が浮いているわけだ。
 ロシアや中国のような広大な領土を支配するには、どうしても強権が必要だと、司馬遼太郎は述べている。この本が書かれたのはソ連崩壊以前だが、北方四島を完全な形で返還させるとしたら、衛星国が独立したそのタイミングしかなかったことが、(遅ればせながら)いまにしてわかる。エリツィンも多少、その気になっていたはずだ。東欧やバルト三国を失うことにくらべれば、北方の孤島などどうでもよかっただろう。
 ところで、シベリア鉄道建設には、多数の日本人技師・作業員が寄与し、ロシアも日本人の勤勉さを評価していた(日露戦争前)。また、日露戦争では、ロシア海軍の水兵がほとんど文盲であったのに対し、日本帝国海軍の乗組員は読み書きができ、ロシア人はそれにも驚いたという。
 いっぽう、中国人はアメリカ大陸の鉄道建設に奴隷のような環境で従事した。その悲惨さは、『エデンの東』にも描かれている。鉄道建設というと、歌になっているジョン・ヘンリーという黒人の伝説的工夫がいるが、中国人のためのエレジーもあっていい。

中国の大盗賊・完全版 (講談社現代新書)

中国の大盗賊・完全版 (講談社現代新書)

  • 作者: 高島 俊男
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2004/10/19
  • メディア: 新書



ロシアについて―北方の原形 (文春文庫)

ロシアについて―北方の原形 (文春文庫)

  • 作者: 司馬 遼太郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1989/06
  • メディア: 文庫



エデンの東 新訳版 (1)  (ハヤカワepi文庫)

エデンの東 新訳版 (1) (ハヤカワepi文庫)

  • 作者: ジョン・スタインベック
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2008/01/24
  • メディア: 文庫



エデンの東 新訳版 (2)  (ハヤカワepi文庫)

エデンの東 新訳版 (2) (ハヤカワepi文庫)

  • 作者: ジョン・スタインベック
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2008/01/24
  • メディア: 文庫



エデンの東 新訳版 (3)  (ハヤカワepi文庫)

エデンの東 新訳版 (3) (ハヤカワepi文庫)

  • 作者: ジョン・スタインベック
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2008/02/22
  • メディア: 文庫



エデンの東 新訳版 (4)  (ハヤカワepi文庫)

エデンの東 新訳版 (4) (ハヤカワepi文庫)

  • 作者: ジョン・スタインベック
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2008/02/22
  • メディア: 文庫



花はどこへ行った ~ソングス・オブ・ピート・シーガー

花はどこへ行った ~ソングス・オブ・ピート・シーガー

  • アーティスト: トニー・トリシュカ・バンド
  • 出版社/メーカー: オーマガトキ
  • 発売日: 1998/07/21
  • メディア: CD



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