『利休椿』火坂雅志 [本・読書]
桃山時代は日本のルネサンスといっていい――と著者があとがきに書いているように、戦乱の世の中がようやく落ち着いたこの頃、日本の代表的な文化が花ひらいた。この短編集は、連作ではないのだが、著者の清の通った思想がうかがえるし、それにとっても味わい深い。いつまでも手もとに置いていて、ときどきひらきたい一冊である。じつは今回も、6年ぶりの再読であった。『西行桜』はまったくちがう作風なのだが、どちらにも著者のやさしさともいえる個性が感じられ、どの短編も読後感は悪くない。