『探求――エネルギーの世紀』ダニエル・ヤーギン [新刊!]
じつにすごい本だ。エネルギーとその探求の歴史が、まるで大河小説のように語られる。日本は福島第一原発の事故でエネルギー・ミックスの見直しを余儀なくされたが、容易に原子力を脱することができるわけではない。再生可能エネルギーにはまだコストの問題があるし、エネルギー・ミックスで安定した供給を果たしているとはいえない。とはいえ、エネルギーの世界は進歩が激しく、たとえばシェールガスのような新テクノロジーが、アメリカのエネルギーにひとつの道筋を示している。オイルピーク理論も、「テクノロジーの進歩による埋蔵量の増加」によって、いまの時点ではそう重視しなくてよくなっている。とにかく、地政学もからめて、エネルギーは複雑な問題であり、ここで簡単にどうこういえるものではないので、ぜひ本書を一読してもらいたい。魅力ある登場人物たちが、エネルギーの科学や技術を進歩させてきたことも描かれている。読物としても一流だし、エネルギー百科事典としての利用価値もあるだろう。エネルギーがいまの世界の安全保障や秩序を左右しているのは、まぎれもない事実だ。どんな分野に属していても、それを意識せずには生きていけないのである。そして、途上国の台頭により、21世紀は、ことさらエネルギーの重要性が増している。