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『本が好き、悪口言うのはもっと好き』高島俊男 [本・読書]

 高島センセーの本はどれも面白い。ちょっと行き過ぎかなと思うこともあるのだが、こういう抑止力がなかったら、物事はどんどん安易な方向に流れてしまうだろう。とくに「支那」は悪いことばだろうか、の章は熟読すべし。ほかにも痛快、愉快な文章多々あり。この本に評が出ていた『三十五のことばに関する七つの章』も面白い。ここで思い出される教訓は、情報の取り入れ方だ。これは、われわれの翻訳という作業にも、あてはまる。情報収集でだいじなのは。
(1)原典にじかに当たる(孫引きは信用しない)。
(2)複数の情報源で照合する。
(3)情報源の信頼性を評価する。
――ということだ。たとえば、英和辞典の多くは、英英辞典の用例をすこし変えたりして、そのまま使うことが多い。さらに、「他の英和辞典の語義や用例をそのまま使う」こともある。
 たとえば、Wikipediaで調べる場合でも、かならず英文のほうも見る。誤訳されている場合もありうるからだ。また、Wikipediaは便利だが、信頼性が高いとはいい切れない項目もあるから、クロスチェックしなければならない。しかし、簡単に調べられることも手間を省いて誤訳しているのも散見する。たとえば、原文にZSU-23-4 Antiaircraft Gunとあっても、英和辞典のとおり「高射砲」としたら、たいへんな誤りだ。なぜなら、ZSUは戦車のような型の「自走砲」であり、なおかつ口径からして「機関砲」であるから、「自走高射機関砲」としなければならない。旧ソ連軍、ロシア軍などにとっては、きわめて重要な防空兵器だから、これをまちがえるのはたいへんな誤訳になる。(1)~(3)を怠ると、そういう結果を招く。Guushipもこれと似ていて、「攻撃ヘリコプター」と固定翼「地上攻撃機」の両方があるのだが、用途記号のイニシャルで区別がつく(AC=攻撃[戦術支援]輸送機もしくはAH=攻撃ヘリコプター)。

本が好き、悪口言うのはもっと好き (文春文庫)

本が好き、悪口言うのはもっと好き (文春文庫)

  • 作者: 高島 俊男
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1998/03
  • メディア: 文庫



三十五のことばに関する七つの章

三十五のことばに関する七つの章

  • 作者: 久保 忠夫
  • 出版社/メーカー: 大修館書店
  • 発売日: 1992/04
  • メディア: 単行本



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