SSブログ

ことばの美学37 四方山話 [雑記]

ノンフィクションは事実との照合に気を遣うのだが、フィクションは事実の確認に気を遣う。アルゼンチンにアマゾン川が流れていたりすることもあれば、小隊を大尉が指揮していたりすることもあるからだ(そういう例がないとはいいきれないが)。兵器や銃器はいちいち確認する。いちばんややこしいのは位置関係や距離の確認で、だから地図と計算尺は欠かせない。タイムテーブルが狂っていることもある(編集者もチェックしてくれるが)。地名も確認しなければならない。現地音の表記というのも、日本語では気にするので〈アドミラル・ブラウン〉がアルゼンチンの軍艦であれば、〈アルミランテ・ブロウン〉にしなければならない。Virgilをヴァージルとしたら、そりゃだれのことかとギョエテがきき、となってしまふ。まあ、疎漏や瑕瑾に気をつけなければならないという、インガな商売であります。ひるがえっていれば、細部へのこだわりが好きだと楽しい仕事だとはいえる。自分で重箱の隅をつついているわけだ。ひとの重箱の底をつつくのは嫌だから、ホンヤクみすてりはよっぽどのことがない限り、読まないというわけ(笑)。ゲラを読んで飽きなかったこの本は、そんな意味でもよくできている。団茶さんを買うなら、こっちを買いなさい。ずっと面白いから。

ヒトラー第四帝国の野望

ヒトラー第四帝国の野望

  • 作者: シドニーD・カークパトリック
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/11/25
  • メディア: 単行本



nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。