『高峰秀子の流儀』斉藤明美 [本・読書]
ついこのあいだ、この本を読んだばかりなのに、訃報を聞くことになってしまった。この本の美点は、コトバを大切にしていることで、高峰秀子の口調そのままに書かれている。ライターはよく語り手の話し言葉の語尾を直してしまうのだけれど、それが感じられない。対象を理解することは、対象以上の存在(抽象的な言いかただが)にしかできないことなので、それに折り合いをつけるのが、記録者のつとめになる。どこかでその限界を察しているから、よい本になったといえる。
ホテルオークラの喫茶室で取材のあと、高峰秀子は「見てご覧なさい、みんな女よ」という。午後のケーキやコーヒーを楽しんでいる中高年の女性たちのことである。「家に帰って、本でも読め」ポツリとそういい、高峰秀子は出口に向かう。この逸話と、「愚痴」「昔話」「説教」がないということだけでも、彼女がどれほどの人物かわかろうというものだ。この本が出てから、一年弱……高峰秀子は逝ってしまった。あとはなにもいうまい。
ホテルオークラの喫茶室で取材のあと、高峰秀子は「見てご覧なさい、みんな女よ」という。午後のケーキやコーヒーを楽しんでいる中高年の女性たちのことである。「家に帰って、本でも読め」ポツリとそういい、高峰秀子は出口に向かう。この逸話と、「愚痴」「昔話」「説教」がないということだけでも、彼女がどれほどの人物かわかろうというものだ。この本が出てから、一年弱……高峰秀子は逝ってしまった。あとはなにもいうまい。