『幻の声』『紫紺のつばめ』『さらば深川』宇江佐真理 [本・読書]
『ひょうたん』ではじめて出会った宇江佐真理だが、正直いって、これは捕物帖のシリーズなので、多少敬遠し、最近まで目を通さなかった。ところが、である。はまってしまった。三冊目の「文庫のためのあとがき」に作者は、「髪結い伊三次の長い長い小説を書き継いでいることになるだろう」と述べ、「読者の紅涙を絞る(できれば)最終話のために、私は今を書くのである」と結んでいる。「鬼平」にも「御宿かわせみ」にも、どこかでさよならしてしまい、いまさら拾い読みをする気にもなれずにいるが、この捕物帖には最後までつきあいたいと思う。
ところで、である。『深川恋物語』(これから読む)の解説で、阿刀田高氏は、「幻の声」がオール読物新人賞をが受けたとき、ストーリーが弱いという不足を感じたという。短編連作集『幻の声』が直木賞の最終候補にノミネートされたときも評価はおおまかなところ変わらず、「江戸風俗は申し分ないが、ストーリーが弱い」とされて受賞を逸したという。
しかし、僕の評価はまったく逆で、ストーリーは、じつに芯が通っているのである。だからこそ、最後まで付き合いたいと考える。阿刀田氏の視点は、ひょっとすると短編へのある種の考えから出ているものかもしれない。O・ヘンリー的なところからサロイヤン的なものへ向かうと、必然的にストーリーが弱いと見なされがちになるが、オチやどんでん返しには、物語をそこで終わらせてしまうという弱点もある。このシリーズは、物語がつづいているからこそ価値があると思う。まだこの三作しか読んでいないが、いずれ追いつきたい。
ところで、である。『深川恋物語』(これから読む)の解説で、阿刀田高氏は、「幻の声」がオール読物新人賞をが受けたとき、ストーリーが弱いという不足を感じたという。短編連作集『幻の声』が直木賞の最終候補にノミネートされたときも評価はおおまかなところ変わらず、「江戸風俗は申し分ないが、ストーリーが弱い」とされて受賞を逸したという。
しかし、僕の評価はまったく逆で、ストーリーは、じつに芯が通っているのである。だからこそ、最後まで付き合いたいと考える。阿刀田氏の視点は、ひょっとすると短編へのある種の考えから出ているものかもしれない。O・ヘンリー的なところからサロイヤン的なものへ向かうと、必然的にストーリーが弱いと見なされがちになるが、オチやどんでん返しには、物語をそこで終わらせてしまうという弱点もある。このシリーズは、物語がつづいているからこそ価値があると思う。まだこの三作しか読んでいないが、いずれ追いつきたい。