『奇蹟の飛行艇』北出大太 [本・読書]
読み進むうちに、題名の意味がよくわかる。たまに機銃を積むことがあったとはいえ、防御兵器のない巨大な飛行艇で、筆者は敵戦闘機を何度も「撃墜」するのである。戦地にむかう前に、筆者は父親と「生き延びる」ことの大切さを確かめ合う。その信念と、危険を冒す勇気、そして他者への思いやりが、この名パイロットを生き延びさせたのだという気がする。転戦のもようを記した地図を見ると驚きを禁じえない。なにしろ日華事変から太平洋戦争のさまざまな激戦地を経て、戦後も短いあいだ、たった一隻だけ残った大型飛行艇として、救難活動に従事したのである。感動的な実話だ。第二次世界大戦で日本の飛行艇がいかに希少な働きをしたかがよくわかる。