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ことばの美学13 馬の話 [雑記]

 乗馬をちょっとやってみるとわかるのだが、人間が馬に乗るには、right sideがある。西洋の馬では、船でいうport side、つまり馬にとっての左側から乗らなければならない。しかし、日本では古来、刀を差す(あるいは吊るす)ために、右側から乗っていた。だから、大河ドラマで「武田騎馬軍団」などが登場するときは、かなり苦労するらしい。get on the wrong side of ~というイディオムには、馬という言葉はないが、もともとは馬の乗り方に由来するようだ。
 エミルー・ハリスが歌っているI’ll Be Your San Antonio Rose(ガイ・クラーク夫人のスザンヌの作詞作曲)に、If wishes were first train to Texas, I’ll ride and I’ll ride, how I’ll rideという一節がある。これはIf wishes were horses, beggars will ride. 「願望が馬なら、物乞いだって乗る」という諺のもじりだ。意味は「願うだけで金持ちになれるなら、だれだって願う。世の中はままならない」といったところだろう。be on the high horse「威張る」というイディオムからも、horseには、高いところから見下ろす、平民ではない、といったニュアンスがある。なにしろ、馬に乗ると、視点は3メートルぐらいの高さになる。
 さらにこの歌には、So if you’ll be my tall dark stranger, I’ll be your San Antonio Roseという一節もある。San Antonio Roseはむろんボブ・ウィルスの名曲で、これはそのオマージュである。また、「背が高くて浅黒いよそ者」が、アメリカ女性の願望の恋人であることが、この歌詞からもわかる。いわばアメリカの3高だね。だから、女性向けのロマンス小説のヒーローは、この手の男性が多い。しかも胸毛! と思うのは日本女性だけのようだ。


真珠の舟

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馬は語る―人間・家畜・自然 (岩波新書 黄版 (375))

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