ことばの美学12 セントルイスは靴の街 [雑記]
というカントリー・ソングがある。地図を見ればわかるように、セントルイスはロッキー山脈以東のへそともいうべき場所にあり、鉄道路線が集中していたために、肉牛がいったんここに集められて、全米に輸送された。最初は生きた肉牛が輸送されていたのだが、処理して肉にしてから送ったほうが儲かると気づいた企業があり、そのため、セントルイス(正確にいえば対岸のイーストセントルイス)は、食肉処理の中心地になった。アメリカの場合、革は肉の副産物ともいえる。だから、セントルイスは靴の街になったわけだ。ベルトなどの革製品も、セントルイスは安い。
もう20年も前のことになるが、米空軍の歴史を描く『ワイルド・ブルー』を訳したとき、主な登場人物のひとりが、そのイースト・セントルイスの出身だった。むろん黒人である。セントルイスには2度行ったことがあるが、街中で白人を見かけることのすくない街だった。白人はたいがい郊外のゲート付き住宅団地に住んでいるのだという話だった。
この小説を読むと、戦後のアメリカが、テレビドラマでいるほどに豊かではなく、ちょうど昭和30年代の日本のように、せっせと努力して成長した時代だったということが、よくわかる。ハヤカワ文庫500点の記念作品で、ありがたいことに上中下あわせて20万部近く売れた。アメリカのこと、空軍のことがよくわかり、その後の翻訳にもとても役立った。
いまでこそ車社会といい切れるアメリカだが、ほんとうに道路事情がよくなったのは、戦後、インターステートが整備されてからの話だ。これがモーテルや郊外のショッピング・モールのようなアメリカン・カルチャーは、インターステートとともに生まれたといえる。このいきさつは、『ルート66』に詳しい。
また、猿谷要氏がアメリカを車で旅した経験を書いているが、1970年代までの車は、オーバーヒートしやすく、ブレーキもすぐに利かなくなった。その後の技術革新で、最近は車はほとんどオーナーがメンテナンスする必要がなくなったが、箱根ターンパイクには、いまもブレーキが利かなくなることが多かった時代の名残の退避用設備(下り坂の脇に、上り坂になった制動のための箇所がもうけてある)が残っている。いまの若いドライバーには想像もつかないことかもしれないが――。
もう20年も前のことになるが、米空軍の歴史を描く『ワイルド・ブルー』を訳したとき、主な登場人物のひとりが、そのイースト・セントルイスの出身だった。むろん黒人である。セントルイスには2度行ったことがあるが、街中で白人を見かけることのすくない街だった。白人はたいがい郊外のゲート付き住宅団地に住んでいるのだという話だった。
この小説を読むと、戦後のアメリカが、テレビドラマでいるほどに豊かではなく、ちょうど昭和30年代の日本のように、せっせと努力して成長した時代だったということが、よくわかる。ハヤカワ文庫500点の記念作品で、ありがたいことに上中下あわせて20万部近く売れた。アメリカのこと、空軍のことがよくわかり、その後の翻訳にもとても役立った。
いまでこそ車社会といい切れるアメリカだが、ほんとうに道路事情がよくなったのは、戦後、インターステートが整備されてからの話だ。これがモーテルや郊外のショッピング・モールのようなアメリカン・カルチャーは、インターステートとともに生まれたといえる。このいきさつは、『ルート66』に詳しい。
また、猿谷要氏がアメリカを車で旅した経験を書いているが、1970年代までの車は、オーバーヒートしやすく、ブレーキもすぐに利かなくなった。その後の技術革新で、最近は車はほとんどオーナーがメンテナンスする必要がなくなったが、箱根ターンパイクには、いまもブレーキが利かなくなることが多かった時代の名残の退避用設備(下り坂の脇に、上り坂になった制動のための箇所がもうけてある)が残っている。いまの若いドライバーには想像もつかないことかもしれないが――。
ルート66―アメリカ・マザーロードの歴史と旅 (丸善ライブラリー)
- 作者: 東 理夫
- 出版社/メーカー: 丸善
- 発売日: 1997/11
- メディア: 単行本(ソフトカバー)