『人類が知っていることすべての短い歴史』 [本・読書]
本というものは、最初から読みはじめ、最後まで読まなければならない――という思い込みがどこかにある。
しかし、辞書を隅から隅まで読むひとは、めったにいない(刑務所にはいったらやりたいと思うが)。百科事典をAからZへと読んでいくのは、「驚異の百科事典男」A・J・ジェイコブズぐらいのものだろう。
ぐうたら旅行作家として名高いビル・ブライソンのこの本もまた、辞書のたぐいとおなじように、ページを踏破するのではなく逍遥する楽しみをあたえてくれる。ウィスキイを飲みながら、ニュートンの変人ぶりや化石になる方法や宇宙とは人類とはなんぞや? といったことを知るには格好の書だ。いや、いかなる本であろうと、読書など、世の中になんの役に立つものではない、それこそただの快楽、害悪、ヘンタイ的行為である、という意識をもってして読むべきだろう。本はアカデミックになりすぎた。