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新・翻訳アップグレード教室(36) [翻訳]

 ふたたび読みやすい訳文について――。
 中学校や高校で英語をならっているうちに、どうしても特定の訳語や語義が意識にこびりついてしまう。しかし、翻訳という作業は、まずそれを捨てることからはじまるといってもいい。それには、まず「知っている単語でもかならず辞書をひく」という作業が欠かせない。
 例えば、as far as A is concerened は「~に関するかぎり」と習う。しかし、As far as I'm concerned, he is guilty.を「わたしに関する限り、彼はクロです」と訳したのでは、翻訳にならない。これは、端的にいえば、「この男はクロだとわたしは思う」という意味なのだ。Aが物であれば。「~に関するかぎり」と訳してもよいかもしれないが、それもかたすぎる。「~についていうなら」あたりが適当だろう。
 obsessionも「妄念」「強迫観念」と訳しがちだが、そういかたい意味ではなく、「(激しい)思い込み」「頭を離れない事柄」という程度である場合が多い。英和辞典は往々にして漢語で語義を述べているが、これは「訳語」ではなく「さらに解読すべき言葉」と解釈すべきだ。よく例に挙げるのだが、instinctivelyは「本能的に」と訳すべきではない場合が多い。蜂が目の前に飛んできたとき、「本能的に」手で払う、ということはない。「とっさに」「思わず」が適切な表現だろう。
 この手のインプリンティングは枚挙にいとまがない。これだけで一冊の本が書けるほどだが、とにかく漢語の語義が頭に浮かんだら、まず疑ってかかり、辞書をもう一度丁寧にひこう。何度もいうようだが、『ウィズダム英和辞典』は、こういった丁寧な語義解釈の点でも優れている。上記のような言葉は、もともと自分ではそう訳していたのだが、同辞典の出現までは英和辞典に例を見なかった。

ウィズダム英和辞典

ウィズダム英和辞典

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 三省堂
  • 発売日: 2002/12
  • メディア: 単行本


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