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新・翻訳アップグレード教室(24) [翻訳]

 今回は訳語のヒントを拾う話。
 翻訳という作業は、「ない袖は振られぬ」という一面がある。この慣用句は本来、「貸したくても金がないんだよ。おあいにくさま」という文脈で使うものだから、ちょっとずれているのは承知でいうが、いざというときのために、ふだんから言葉という銭を溜め込んでおかなければならない。
 前に言及した日経版の「なるほど英語帳」もなかなか役に立つ。著作権にふれるので引用はできないが、きょう(11月5日)付けで、在英ジャーナリスト阿部菜穂子氏は、じっさいの事件にふれながら、make a stand「抵抗する」というイディオムを取り上げている。こういうふうにコンテキストがくわわると、言葉の意味はなおのこと理解しやすくなる。一読してほしい。
 映画の字幕もなかなか秀逸なものがあって、メモをとることも多い。DVDで見ているならべつだが、ぱっと消えてしまうものなので、いつも手の届くところにメモ用紙と鉛筆を置いておかなければならない。このあいだも、アクション映画にImpressive! 「やるな」という字幕があった。小説ではもっと長い台詞になってしまうかもしれないが、これは使える! と思った。こういう台詞は、使えるシチュエーションが訪れるまで、だいじに巾着にしまっておかなければならない。
 ここでたいせつなのは、両方ともメモや切抜きというアナログな作業によってためこむということだ。データベースという他者の脳みそ(電脳辞書もその一種)ではなく、自分の脳みそをレファレンスの糸口にして(つまりざっと記憶する)、くわしい内容はメモや切抜きを見ればよいようにしておくわけだ。
 電脳辞書は便利ではあるが、弊害もある。それについては次回。


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