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新・翻訳アップグレード教室(13) [翻訳]

 翻訳学校で教えていると、「英語が好きで翻訳をやりたい」といっている割りには、英語の勉強に興味がないのではないかと思うことがままある。新しい英語の辞書、英語を学ぶのに役立つ本をあまりにも知らなさ過ぎる。ちょっと本屋へ行けば語学のコーナーに見つかるような本、英米の文化を学べるような手軽な本をまったく知らないのには驚く。
 ここで挙げる『日本人の英語』など、英語の「てにをは」を知るには必携必読だと思うのだが、(生徒たちが)題名をメモしているところを見ると、読んだことはおろか、存在すら知らなかったのだろう。
 翻訳書を何冊か世に出したからといって、勉強を怠ってはいけない。このあいだある翻訳書をぱらぱらとめくっていたら、「苦しんでいる乙女」という訳語にぶつかって唖然とした。原文はdamsel in distress「困っている(苦境にある)乙女」のはずだ。「苦しむ」は自分に原因があるわけで、まったく意味がちがう。damsel in distressは、たとえば悪漢に捕らわれて白馬の騎士が助けに来るのを待っている乙女のことだ。こういう訳語をひねり出すとは、騎士道物語を読んでいないか、よっぽど不注意なのだろう。
 アメリカ版白馬の騎士のcavalry(騎兵隊)は、現在では「(ヘリコプターもしくは自動車化の)機動部隊」を指すが、これもIndian country(敵地)にいるときや窮地に陥ったときに援けに来てくれるという文脈では、「騎兵隊」と訳さないと意味が通らない。
 先日、あるところで「堀部安兵衛」とはだれですかという質問が出て、きかれた人(比喩に使ったご本人)がびっくりしていたが、それと似ている。英語でも、こういう常識を知らないと大恥をかく。

日本人の英語

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  • 作者: マーク ピーターセン
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1988/04
  • メディア: 新書


続 日本人の英語

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  • 作者: マーク ピーターセン
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1990/09
  • メディア: 新書


心にとどく英語

心にとどく英語

  • 作者: マーク ピーターセン
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1999/03
  • メディア: 新書


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