『求めて候』『凶刃 累之太刀』鳴海章 [本・読書]
旗本をはじめとする武士たちがへなちょこになり、士農工商の枠組みが崩れたなか、相手を斬らずにはおかない、鋭い剣をふるう男たちが出現した。時代がこういう男たちを求めたのか、こういう男たちが時代を築いたのか……。幕末から、明治3年の庶民の帯刀禁止から明治9年の廃刀令に至るまでの短い期間、まるで戦国時代直前のように、剣に生きる男たちがいた。この男たちは、歴史には残らない。しかし、歴史に残る人物たちと交わってゆく。同時代性をパノラマのように展開させる新しい手法がここにある。いや、山田風太郎の明治物にもたしかにあったのだが、これほど実在の登場人物たちが鮮明ではなく、影のように、背景のように行過ぎていたような気がする。物語はどう展開してゆくのか? 隻眼の剣士や隻腕の剣士たちの行く末は? 次の作品が待たれる。
凶刀 累之太刀 幕末牢人譚 参 (幕末牢人譚) (集英社文庫)
- 作者: 鳴海 章
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2011/08/19
- メディア: 文庫