『海軍乙事件』吉村昭 [本・読書]
山本五十六の乗機が米軍のロッキードP-38「双胴の悪魔」に撃墜されたことはよく知られている(これが海軍甲事件)。だが、その後任の連合艦隊司令長官と福留参謀長が分乗していた飛行艇もまた、遭難したのである。そして、参謀長の所持していた最重要機密書類は……。吉村昭はあくまでfirsthandの情報源を中心に、事件を再構築してゆく。この手法は、ボブ・ウッドワードなどの調査報道にも通じるものである。いま、こういうことができる作家は、どこにいるだろうか? と思わずにはいられなかった。