ことばの美学41 歌に事寄せて その2 [ギター・音楽]
今回の大災害で思い浮かべた歌がいくつもある。マルヴィナ・レイノルズがつくり、サーチャーズが「雨に消えた想い」としてヒットさせ、ジョーン・バエズはそのまま「雨を汚したのはだれ?」と歌っていた――「やさしい雨が降るうちに、緑の草は枯れ、雨に打たれて立っていたあの少年の姿もなくなった……彼らは雨になにをしてしまったのか」――核実験に汚染された雨のことだが、いったいわれわれは海や山や野になにをしてしまったのだろうか? 早世したフォークシンガー、フィル・オックスには「木の葉の丘」などの美しい歌が多いが、「フォーチュン」では、ちょっとしためぐり合わせで不運な目に遭うひとびとを描いている。ほんのすこし、運命が狂っていただけで、わたしたちもおなじことになっていたかもしれない、と。「勝利を我らに」は公民権運動の歌として知られているが、黒人フォークシンガーのオデッタは、自分が立ち向かおうとしていること、克服しようとしていることを思って歌えばいいのだといっている。だれもが豊かだったわけでもなく、偏見や差別も多かった1960~70年代をふりかえって、現代を生き抜くのも、ひとつのありようかもしれない。