『ひょうたん』『聞き屋与平』宇江佐真理 [本・読書]
本の面白いところは、やはり書店での出会いだ。アXXンでのお勧めなんか当てになりはしない。もう読むものなどない――かと思われたときに、ふと書店の棚からこちらに背を向けている本が見つかる。『ひょうたん』は、祐天寺の小さな本屋で手に取った。それが面白かったので、等々力の書店でほかの本を注文したついでに買ったのが『聞き屋与平』。どちらも江戸の町人のくらしぶりがうかがえる本だ。それに、泣かせる話をさらりと書いているのが、とてもうれしい。これでもかこれでもかとやられるとうんざりするのだが、この作者はほんとうにあっさりとした文章でしんみりさせる。それだけ地味、と見なされてしまうのかもしれないが、この2冊を読んだだけでもたいへんな秀作にぶつかったという気がする。周五郎賞をとってほしい!!