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ことばの美学 29 理念と大義 [雑記]

 オリンピックの招致が失敗に終わったというのは、ある意味では朗報だった。海外ではナショナリストとして知られ、レーシスト発言をくりかえすガバナーには、東京でオリンピックをやることの理念や大義はとうてい語れなかったのである。金銭的なことや便宜をいくら強調しても、それは理念ではない。それに、「環境五輪」という言葉そのものに矛盾が内在している。二度目の東京五輪の理念をうたうなら、たとえば前回の五輪が国民を勇気付け、その後の繁栄につながったとして、今回は恩返しとして国際社会に貢献するなどといったことを強調してもよかっただろう。しかし、オリンピックの理念など、日の丸を揚げることしか考えていないガバナーの頭にはなかったにちがいない。
 どんな小さな運動でも理念や大義が必要なのは、それによって行為の規範がととのうからだ。ほどこしや寄付をするのは善意として褒められることでも、それはそのときだけのことにすぎない。改革や変化をほんのすこしでももたらすには、そこに理念や大義がなければならない。あんがい、そんな青臭いものが世界を動かしてきたのである。

クーベルタンとモンテルラン―20世紀初頭におけるフランスのスポーツ思想

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  • 作者: 小石原 美保
  • 出版社/メーカー: 不昧堂出版
  • 発売日: 1995/02
  • メディア: 単行本



オリンピックと近代―評伝クーベルタン

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  • 作者: ジョン・J マカルーン
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 1988/08
  • メディア: 単行本



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