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ことばの美学11 越南語と神父のローマ字表記 [雑記]

 時代物の韓国ドラマを見ると、やはり漢字文化の国だったのだなと思う。テレビの紀行番組でヴェトナムのホイアンを訪れるものがあったが、ここでも漢字が生き残っていた! ホイアンは漢字では「会安」となる。hoiはヴェトナム語では「集まる」「会う」を意味し、もちろん語源は中国語の「会」である。トンキン(東京)湾にそそぐホンハは紅河。ハイフォンはその名も海防である。
 有名な胡志明(ホー・チミン)は、ひととき阮愛国(グエン・アイコク)と名乗っていたが、これは愛国者であり、ヴェトナム最後の王朝「阮」の末裔であることを思わせるためだったのであろう。ヴェトナムの大統領にゴ・ディンディエムがいるが、苗字は呉、名が延えん(王へんに炎)となる。このように、ヴェトナムの姓名は中国の姓名と似通っている。つまり、ホー・チ・ミンというように名をナカグロで区切る表記は誤っている。新聞などでは、名をあたかも姓のように扱い(例えば「ズン首相」)としているが、これも笑止である。華国鋒主席を鋒主席と表記するだろうか?
 ヴェトナム語の現在の表記は、フランス人神父が作ったのだが、これもカナに直すときに読み違えられている例が多い。Quang Triは「クアン・トリ」ではなく、「クァンチ」である。Nha Tranは「ナー・トラン」ではなく「ニャチャン」である。
 日本語とおなじように、漢語もかなり導入されていて、しかも中国語よりも日本語の発音に近いものがある。kiem=剣、quan-dao=半島、quan-cahn=軍監(憲兵)、thieu-uy=少尉、truung-uy=中尉、dai-uy=大尉、cao-lau=高楼(レストラン)、quan=館、quoc-khach=国客(国賓)、quoc-ky=国旗……いくらでもある。
 このように、ヴェトナム語の辞書を見ていると、漢字であったほうがわかりやすいと思うことがママある。以前、ヴェトナム戦争を舞台にしていたものを訳していたときには知らなかったのだが……。

 
エクスプレスベトナム語

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  • 作者: 川口 健一
  • 出版社/メーカー: 白水社
  • 発売日: 1991/10
  • メディア: 単行本



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