新・翻訳アップグレード教室(31) [翻訳]
海外の小説を訳すのに『知って役立つキリスト教大研究』が役立つことは、前に触れた。それはそれとして、聖書の一冊ぐらい持っていなければならないが、これがじつはなかなか厄介な問題を含んでいる。定本があるようでないからだ。
以前住んでいたところの近くには神学校があり、古本屋にちょっとめずらしい聖書が出ることがあった。よく使う『旧約・新約聖書』(ドン・ボスコ社 1964年初版 1973年7版)、『舊新約聖書』(日本聖書教会 1973年)はそこで手に入れた。
名前のところは切り取られているし、古本屋に聖書を売るぐらいだから、持ち主は落第生だったのかもしれない。ともあれ、前者は口語訳、後者は文語訳である。ただし、この二冊をそのまま対照するわけにはいかない。なぜなら、ドン・ボスコ社の聖書はカトリック訳、日本聖書教会の聖書はプロテスタント訳だからだ。解釈や表記(カトリックでは「イエス」ではなく「イエズス」等々)がちがうだけではなく、正典とするものもちがう。ドン・ボスコ社の聖書には、「外典」とされるものがいくつか含まれている。
カトリック・プロテスタントの「新共同訳」はまだ買っていないのだが、いのちのことば社の『新改訳聖書』は注解や印象が便利そうなので最近買った。これはプロテスタント向けのようだ。
いずれにせよ、聖書の言葉は文語訳のほうが感じが出るので、じっさいには『舊新約聖書』の訳を参考に訳す場合が多い。文語訳の古い聖書を古書店で見つけたら、買っておくとなにかの役に立つはずだ。なお、原書はOxford University PressのThe Holy Bibleを使っている。
ついでながら、イスラム教の『聖クルアーン』は以下のページで日本語検索できる。
http://cgi.members.interq.or.jp/libra/nino/quran/index.html