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新・翻訳アップグレード教室(2) [翻訳]

☆専門用語――というほどではないが、原語がおなじでも場合に応じて訳し分けなければ言葉がある。
 例えばcrewは、民間の旅客機なら「乗務員」、軍用機なら「乗員」「搭乗員」(地上の整備員ground crewは「地上員」)、艦船なら「乗組員」、ヨットなら「クルー」としなければならない。しかも、船の場合は有資格船員や将校(いずれもofficer)と乗組員を区別しなければならない。このなかでは、「乗員」が比較的幅のひろい言葉なので、使いやすいだろう。
 fire controlのように、軍事用語として厳密には火器管制(空軍)、射撃指揮(海軍)、射撃統制(陸軍)と訳し分けなければいけないような言葉は、さらに厄介だ。細かいことをいえば、日本帝国海軍では艦載機と搭載機も意味がちがっていたが、これはたとえ空母であっても、最近は「艦載機」で差支えがない。
 また、陸軍は「士官学校」、海軍は「兵学校」であるという知ったかぶりの指摘もあるが、どだい兵科士官向けの教育課程であった日本帝国海軍の兵学校とNaval Academyで兵科士官のみを養成するわけではないアメリカ海軍とでは、制度がちがう。これも「海軍士官学校」で差支えがない。
 report (~to, ~for)「(どこどこに、これこれの地位の人間のもとに)出頭する、出勤する」という動詞についても、よく誤訳を見かける。これは前置詞がつくのだから自動詞で、他動詞の「~を報告する」とは異なる。自動詞でも「報告する」の意味はあるが、そのときには~onなどの前置詞がつき、「~について(だれだれに)報告する」という形をとる。さらに、report toのあとにthe Presidentといった「人間」が来る場合には、「直属する」の意味になる。
 今回はやや専門的な話が多かったが、これにて終了。


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