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新・翻訳アップグレード教室(1) [翻訳]

☆翻訳という作業は、ともすれば原文に「ひっぱられる」傾向がある。そこをきちんとした日本語に「引き戻す」ように心がけなければいけない。いくつか簡単な例をあげよう。
 A ペンが五本、机の上にならべられていた――「上に」は不要だし、日本語ではこういう受動態は不自然。「ペンが五本ならべて机に置いてあった」が流れのいい自然な訳だろう。
 B footprints in the snow 雪の中の足跡――ではまちがい。足跡は雪にめり込んでいるからinが使われるだけだ。「雪の上の足跡」が正しい。おなじくdead in the waterも「水中であがきがとれない」のではなく「水(の上)に浮かんだまま動けなくなっている」状態のこと。ちなみに前置詞は訳さないほうがいい場合が多い(「ベッドの上に寝ている」とはいわないでしょう?)。
☆つぎはちょっと高レベルになるが、英語のSVOをそのまま日本語に置き換えるとおかしくなってしまう例。
 C 彼は銃を撃った――He fired the gun.をそのままこう訳すと、日本語では「銃を狙って撃った」ことになるというねじれが生じる。「弓を射る」とはいわず、「矢を射る」というがごとし。「撃った」は、「彼は銃で~を撃った」という文で使うべきだ。この原文は訳しづらいが、「彼は発砲した」とすべきだろう。
 D 彼女はコンロに火をつけた――これも、コンロが燃えているのかと思ってしまう。「コンロに火を入れた」とすべきだろう。
☆英語の性格上どうしても使わなければならない言葉をそのまま訳すとおかしなことになる場合もある。
 E 彼女はワインのボトルを持ってきた――これではまるで「空き瓶」を持ってきたようだ。a bottle of wineは「数えることのできない」(銘柄として表現する場合などはべつ)ワインをbottleにこめることで「一本」「二本」と数えられるようにするための表現だから、日本語では「ワインを(一本)持ってきた」とすべきだ。あなたの彼女、キッチンから「ワインのボトル」を持ってきますか? 常識でわかることだろう。
☆長くなったので、きょうはこれまで。


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