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『ブラック・リスト――極秘抹殺指令』ブラッド・ソー [新刊!]

 二〇一三年六月、電子情報(ELINT)や信号情報(SIGINT)を収集し、分析することを主な任務としているアメリカの情報機関NSA(国家安全保障局)が、アメリカ国民に対して過度の情報収集を行なっていたことを、元NSA・CIA局員エドワード・スノーデンが暴露した。
 十月には、ドイツのメルケル首相の携帯電話が、やはりNSAやCIAにより、十年以上にわたり盗聴されていたことが発覚した。メルケル首相は同月末のEU(欧州連合)首脳会議で、「残念ですが、わたしたちはデービッド(イギリスのキャメロン首相)とはちがって、この集団には含まれていません」と述べた。この集団とは「ファイブ・アイズ」(五つの目)という同盟のことだ。
 ファイヴ・アイズは、アメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドの五カ国の情報機関による国際情報同盟で、第二次世界大戦中の米英の秘密条約が基本となっている。そして、ドイツはいまだに▼敵国▲と見なされ、この同盟にはくわえられていない。メルケル首相は、それを揶揄したのだ。
 だが、スノーデン容疑者が暴露したように、監視されているのは要人やテロリスト容疑者ばかりではない。
 二〇一四年一月十七日、オバマ米大統領は、NSAによる大規模な通話・通信記録の収集を大幅に縮小する方針を発表した。「新たなやりかたが必要だと考えてる。そのため、愛国者法第二一五条に基づく現行の計画を中止して、政府が大量のメタデータ(訳注 通話そのものではなく、通話記録のたぐい)を保管せずに必要な能力を維持できるような仕組みを構築するよう指示する」というオバマ大統領の言葉は、それまで同法を根拠に、通話・通信記録の収集がなされていたことを裏付けている……(訳者あとがきより)。
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 この作品、じつにおもしろい。キャラクターがきわだっているし、情報社会でITを使わずに戦うことがいかに難しいかが克明に描かれている。携帯電話もGPSも、便利だが両刃の剣で、いつその刃が自分に向けられるかわからない。現代の冒険小説の主人公たちは、いたるところにある防犯カメラの監視の目を逃れ、携帯電話やスマートフォンの使用には慎重を期しながら、戦わなければならないのだ。
 なお、あとがきの紙面が足りなかったので紹介できなかった、ブラッド・ソーの代表作を以下に記す。
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The Lions of Lucerne (2002) 『傭兵部隊〈ライオン〉を追え』(二〇〇二年七月ハヤカワ文庫NV)
Path of the Asssassin (2003) 『テロリスト〈征服者〉を撃て』(二〇〇三年九月ハヤカワ文庫NV)
State of the Union (2004) 『「亡霊国家ソヴィエト」を倒せ』(二〇〇五年十一月ハヤカワ文庫NV)
Blowback (2005) NPR(米国公共ラジオ局)がオールタイム・トップ一〇〇殺人者スリラーのひとつに認定。
Takedown (2006)
The First Commandment (2007)
The Last Patriot (2008) 国際スリラー作家協会最優秀スリラー候補作。
The Apostle (2009)
Foreign Influence (2010) 《サスペンス・マガジン》誌が二〇一〇年度最優秀政治スリラーのひとつに挙げた。
The Athena Project (2010)
Full Black (2011) 《サスペンス・マガジン》誌が二〇一一年度最優秀政治スリラーのひとつに挙げた。
Black List (2012)本書
Hidden Order (2013)

ブラック・リスト -極秘抹殺指令-(上) (SB文庫)

ブラック・リスト -極秘抹殺指令-(上) (SB文庫)

  • 作者: ブラッド・ソー
  • 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
  • 発売日: 2014/03/19
  • メディア: 文庫



ブラック・リスト -極秘抹殺指令-(下) (SB文庫)

ブラック・リスト -極秘抹殺指令-(下) (SB文庫)

  • 作者: ブラッド・ソー
  • 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
  • 発売日: 2014/03/19
  • メディア: 文庫



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