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『啄木の妻 節子星霜――ひとり芝居』山本卓 [本・読書]

今年は啄木没後百年ということもあり、そこかしこで記事を見かける。故郷へ帰らず、帰れずに「懐かしきかな」と詠んだその思いに、地震・津波・原発被害で望郷の念を味わっているひとびとが共感するというのは、ことばの持つ力のひろさを意味しているのだろうか。啄木の歌はだれでも知っている。「蟹とたはむる」「たはむれに母を背負ひて」「じっと手を見る」「友がみなえらく見ゆる日」といったフレーズをきくだけで、歌のすべてがよみがえるという力がある。毎日のことをふつうの言葉で語って、万人の心を打つ。別役実氏の評は、「時代の閉塞感」を節子と啄木のいとなみに結びつけて妙味がある。おなじ評にある、「女達は男のまとうものを日々膝に拡げて裏から見るのである。仕立て、糸でちすけ、毎日畳み、ときに洗い張り、男の人生の綻びを繕う。裏から見ると、天才といえども男たちは皆愛らしい」という加藤剛氏のことばは、なんともいえない渋く艶のある見方だ。
このひとり芝居は、10月20日と21日、しもきた空間リバティで上演される。主宰は劇団「波」東京公演をサポートする会、お問い合わせは090-4378-2005に。

啄木の妻 節子星霜―ひとり芝居・二幕

啄木の妻 節子星霜―ひとり芝居・二幕

  • 作者: 山本 卓
  • 出版社/メーカー: 同時代社
  • 発売日: 2008/06
  • メディア: 単行本



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