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ことばの美学43 英語の達人 [雑記]

山岡洋一さんが急逝され、まず思ったのは、これで英語の達人がひとりいなくなってしまったな、ということだった。『翻訳の世界』に連載なさっていたのを切り抜いていたのだが、『英会話のあぶない常識』に盛り込まれたので処分した。受験英語に毒されている世代は、A(英語)=B(日本語)という図式から、なかなか離れられない。この本はそれに注意せよと教えている。「IN FACTは実際か」というあんばいである。決まりきった訳語に疑問を抱くことは、翻訳者にとって至上の義務といってもいい。さもないとこのあいだの某社の「機械訳」ほどでなくても、「機械的訳」になってしまうからだ。そう、この本は10冊ぐらいのシリーズにしてほしかった。私も挙げてみよう。「INSTINCTIVELYは反射的にか」「GLADは喜ぶか」「A FEWは数~か」……どこのだれが蠅を「反射的に」手で払うだろう? どこのだれが試験が終わって「喜ぶ」だろう? 「とっさに」「ほっとする」という訳のほうがふさわしい。a fewは日本語の「数~」(一桁の数)ではなく、少数ではあるがある程度の数だから、文脈によっては「数十」、「十数」にもなりうる。山岡さんはもうこういう役に立つ本を書いてくれないから、背中から訳文を覗かれていると思いながら、よく辞書をひこう。『ウィズダム』には、in factもふくめて、適切な訳語がちゃんと載っている。




英単語のあぶない常識―翻訳名人は訳語をこう決める (ちくま新書)

英単語のあぶない常識―翻訳名人は訳語をこう決める (ちくま新書)

  • 作者: 山岡 洋一
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2002/07
  • メディア: 新書



ウィズダム英和辞典

ウィズダム英和辞典

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 三省堂
  • 発売日: 2006/10
  • メディア: 単行本



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