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ことばの美学55 原発と核武装 [雑記]

政治問題はあまり書きたくないのだが、「原発」については、ひとこといっておかなければならない。「原発」はエネルギー問題であるだけではなく、国防・軍事問題という側面もある。日本に原発があって、ロケット打ち上げの技術があるということは、潜在的に核兵器、ICBMを製造できる能力があることを意味する。つまり、それには一定の抑止力がある。また、日本が核兵器を製造できるのに造らないということは、原発のある国が核兵器を製造しないように仕向ける抑止力にもなる。たとえば韓国は核燃料再処理をアメリカとの協定で禁じられているが、これは韓国が核兵器を製造する可能性が高い(極秘裏に製造しようとしたこともある)から、アメリカが核拡散防止の立場から禁じたものだ(この条約は数年後に失効する)。そういう現状で日本が原発をいっさい廃止すれば、ひとつの大きな抑止力を失うことになり、べつの抑止力を持たざるをえなくなる。つまり、核兵器保有が現実味を帯びる。これがいまの世界における日本の原発の実相だが、ブロガーを除けば、あまりその角度から考察されてはいないようだ。ちなみに、原発はそもそもアメリカの原子力潜水艦のためのテクノロジーで、それが民用になった。原発は軍事施設なみのレベルで管理・警備されなければならない。いまのずさんな管理に、原潜の産みの親であるリックオーバー提督は、草葉の陰で嘆いていることだろう。「探求」にも提督のエピソードは書かれている。

探求――エネルギーの世紀(上)

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  • 作者: ダニエル・ヤーギン
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2012/04/03
  • メディア: 単行本



探求――エネルギーの世紀(下)

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  • 作者: ダニエル・ヤーギン
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2012/04/03
  • メディア: 単行本



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ことばの美学54 辞書をひく感覚 [雑記]

なにしろ冒険小説やハイテク軍事スリラーは、世界をまたにかけている。最近訳したものにも、セルビア・クロアチア語やベブライ語がでてきた。ヘブライ語は前から辞書を買ってあって、こんなもの読めるかいなと思っていたのだが、意外や意外、アラビア語の知識が役に立った。むろん、おなじアブラハムさんの子孫とはいえ、文字はまったくちがう。だが、母音文字がアレフのほかにないという点や、子音文字のならびが、若干似ている。実は、子音(これに母音記号がつく)だけの辞書というのは、ひくのが楽なのだ。katabaはアラビア語で「書く」を意味するが(じっさいには三人称過去)、辞書ではktbとひけばいい。これに母音文字がくわわると、順列組み合わせがはるかに増える。単純にいって、カキクケコ×タチツテト×バビブベボとなるわけだから、125通りを見なければならない。ヘブライ語も、文法はむろんわからないながら、単語ぐらいはひけると判明した。いっぽう、セルビア・クロアチア語は、ロシア語に似た言葉もあるから、そちらから攻めていくことも可能だ。言葉も文化も、国境線でくっきりと区切られているわけではない。

現代ヘブライ語辞典 [改版]

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  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 日本ヘブライ文化協会
  • 発売日: 2006/02
  • メディア: 単行本



CDエクスプレス セルビア語・クロアチア語 (CDエクスプレスシリーズ)

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  • 作者: 中島 由美
  • 出版社/メーカー: 白水社
  • 発売日: 2002/06
  • メディア: 単行本



セルビア・クロアチア語基礎1500語

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  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 大学書林
  • 発売日: 1979/04
  • メディア: 単行本



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ことばの美学52 ほんやくうらばなし [雑記]

ノンフィクションでもフィクションでも、ホンヤクで気を遣うのは、事実かどうかの確認だ。数字はすべからく裏をとらなければならない。その他の事柄でも、明らかにまちがっていれば訂正する。いきおい、原文とは異なる場合も多い。たいがいは、いちいち問い合わせずに直すが、『シール・チーム・シックス』では、著者のひとりと連絡がとりやすかったので、英文で質問を書き、編集者に取り次いでもらって、回答を得たので、たいへん助かった。参考までに、だいたいつぎのようなことだった。
1 BTR60PB(水陸両用の装甲輸送車)が二〇ミリ機関砲を発射した――この型にはない装備なので、一四・五ミリではないかと確認して訂正。
2 空母〈ジョン・F・ケネディ〉の兵装として、ファランクスMk15二基、赤外線追尾方式のSAMを発射するRAM(回転弾体型ミサイル)発射機二基と書かれていた――RAMは実用化されず、ファランクスは三基なので、それを指摘して訂正。
3 QRF(モガディシュの即応部隊)のヘリが、四〇ミリ弾を――これはスペクター・ガンシップ(対地攻撃機)の兵装で、ヘリには積むのはとうてい不可能。それに、モガディシュにスペクターを配備することを、米政府は認可しなかった。したがって削除。
こういった場合、できるだけ典拠として、武器の種類別のジェーンズ年鑑を使う。これは高い本なので、毎年飼うわけには行かないから、年遅れの古本を探す。ネット情報は、かならずしも信用できるとはかぎらない(ことに日本語に翻訳されている場合は)。考証にはこのように手間も金もかかる。それでも、原文とはちがうと思う向きもあるかもしれない。そこがホンヤクの難しさのひとつでもある。


Janes Fighting Ships 2012-2013

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  • 作者: Stephen Saunders
  • 出版社/メーカー: Janes Information Group
  • 発売日: 2012/08
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Jane's Armour and Artillery 2011-2012

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  • 作者:
  • 出版社/メーカー: Janes Information Group
  • 発売日: 2011/06/23
  • メディア: ハードカバー



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ことばの美学51 テロリストのことば [雑記]

アラビア語をかじっておいてよかったと思うのは、テロリストが悪役の昨今の冒険小説で、これが必須の言語であるからだ(スパイ小説のロシア語やハイテク軍事スリラーの中国語同様)。多少の字母のちがいはあるが、これでペルシア語の辞書もひける。パキスタンやアフガニスタンで使われているパシュトゥー語やダリー語も、アラビア語やペルシア語とかかわりが深いから、辞書を縦横無尽に使いこなせば、いろいろなことがわかる。外国の地名では、地名に「山」「谷」「川」などが含まれているかどうかにも気を配らなければならない。でないと、「マウント・フジヤマ」になってしまう。なかにはアルファベット表示の辞書もあるから、謎のアラビア文字に悩まされたくない向きは、そういう辞書を探せばいい。まあ、ホンヤクをやっていたら、出てきた言語の初級辞書ぐらい、もとの字母でひけないのは恥ずかしいけどね。

アラビア語が面白いほど身につく本―文字から旅行会話までマスターできる (語学・入門の入門シリーズ)

アラビア語が面白いほど身につく本―文字から旅行会話までマスターできる (語学・入門の入門シリーズ)

  • 作者: アルモーメン・アブドーラ
  • 出版社/メーカー: 中経出版
  • 発売日: 2004/06
  • メディア: 単行本



パスポート 初級アラビア語辞典

パスポート 初級アラビア語辞典

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 白水社
  • 発売日: 1997/01
  • メディア: 単行本



新ペルシア語大辞典

新ペルシア語大辞典

  • 作者: 黒柳 恒男
  • 出版社/メーカー: 大学書林
  • 発売日: 2002/10
  • メディア: 単行本



Pashto Dictionary & Phrasebook: Pashto-English English-Pashto (Hippocrene Dictionary & Phrasebooks)

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  • 作者: Nicholas Awde
  • 出版社/メーカー: Hippocrene Books
  • 発売日: 2003/01
  • メディア: ペーパーバック



English Pashto Dari Dictionary

English Pashto Dari Dictionary

  • 作者: S Yarzi
  • 出版社/メーカー: Sabawoon Language Services
  • 発売日: 2009/01
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ことばの美学50 危うい「紋切り型」の言葉 [雑記]

日経夕刊(7月11日)に、作家の阿部和重氏が、そう題したインタビューでいろいろと述べている。こういう記事をまとめるのは難しく、またバイアスがかかるといけないので、あまり書けないが、おおいに共感した。最後のほうの一部を引用しよう。「文学に必要なのは批評性だ。どんな状況でも絶えず生み出される無責任な言葉に対し、それは違うという声を発しなければならない。文学は紋切り型をずらしたり組み立てたりすることで、その影響力を遮断できる……」
翻訳者も、その仕事において、これを銘記しなければならない。なぜならホンヤクの場合、「紋切り型」とは「英和辞典の語義として真っ先に書かれているコトバ」であり、そこからどう工夫するかが、重要な作業であるからだ。ecnomyは「経済」だけれど、「景気」と訳したほうがいい場合があるだろう。economicは「経済的」だけれど、「採算がとれる」「利益が出る」と訳したほうがいい場合があるだろう。(むろん、すぐれた英和辞典にはこういうコトバもちゃんと載っているが、「紋切り型訳者」はけっして辞書を念入りにひかない。)I'm glad...は「うれしい」ではなく「ほっとした」のほうが適切な場合が多々あるだろう。
だから、たまに会っても紋切り型の言葉しか出てこない紋切り型訳者の訳は危ぶまれるのである。こいつ、cornyだねえ、と肚で思いつつ。

幼少の帝国: 成熟を拒否する日本人

幼少の帝国: 成熟を拒否する日本人

  • 作者: 阿部 和重
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/05/22
  • メディア: 単行本



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ことばの美学49 そのときにわからなかったことば その2 [雑記]

二冊目の訳書のポケミス『雇われ署長』は、原題をDead in the Waterという。この言葉が、最初はよく理解できなかった。風もなくて船が動きが取れなくなることがもとの意味で、それに「水中の死体」をひっかけているのだろうが、船は浮かんでいるのだからon the waterでは? というように考えてしまったのだ。しかし、そうではなく、船はお尻を水につけている(だからいつも濡れているから、sheという女性人称代名詞が使われるというのは俗説。小生がいったわけではない)。つまり、「水のなか」なのだ。それがわかるまでに、しばし時間を要した。ただ、これを訳す場合には、あくまで「水中」ではなく「水の上の」「水面の」ということになるだろう。
雪についても、それとおなじことがいえる。ビル・モンローが「雪に残る足跡」という歌を歌っているが、原題はFootprints in the Snowである。足跡は雪の表面に触れている(on)のではなく、雪に食い込んでいるから、inなのだ。しかし、これも「雪の中の足跡」と訳したら×――日本語では「雪の上の足跡」になる。ちなみに歌詞は以下のとおり。雪は地面に触れているだけなので、むろんon the groundとなっている。
I traced her little footprints in the snow
I found her little footprints in the snow
I bless that happy day when Nellie lost her way
For I found her when the snow was on the ground

雇われ署長―署長ベネット (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1456)

雇われ署長―署長ベネット (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1456)

  • 作者: テッド・ウッド
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 1985/09
  • メディア: 新書



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ことばの美学48 そのときにわからなかったことば [雑記]

――が、あとでわかることがある。これもそのひとつで、あるひとにきかれ、直訳は「法を護る盗賊」だが、と答えておいたのだが、何年かたってわかった。なぜかというと、当時はあまり存在していなかったロシア語の俗語辞典が、ロシアン・マフィアの欧米進出と、欧米人のマフィアとの接触によって(?)、続々と出版されるようになったからだ。ただ、厄介なのは、あれに載っていて、これには載っていないということがあることで、だから数冊をとっかえひっかえ見なければならない。さて、この「ヴォール・フ・ザコーネ」という言葉にいう「法」とは、犯罪者の掟のことだそうだ。つまり、鉄の掟を守る筋金入りの犯罪者――組織の大親分を指す。ロシア語は悪態が豊富で、それにもけっこう往生する。このあいだ訳したデイル・ブラウンの『アメリカ本土空爆指令』にもふんだんに出てきた。けっこう傑作なものがあるのだが、直訳では間が抜けるし、うまく訳しきれないのが残念だ。こんなときは、I氏に知恵を借りたい。
 ところで、アメリカの政治経済物をやっていると、cycleという表現がよく出てくる。これは、政治サイクルのことで、上院と下院の任期、改選にかかわっている。下院の任期は2年、上院は6年(ただし3分の1が2年ごとに改選)。つまり、4年に一度の選挙は大統領選挙と重なり、そのあいだの2年目の選挙は、大統領の施政を問う中間選挙となる。議院内閣制ではないアメリカに総解散はないので、これが政治が動く基本的な流れになっている。ちなみに、議会全体をcongressと呼ぶことはあっても、「上院議員も含めた議員」という意味でcongressmanという言葉を使うことはめったにない。congreaamanは99パーセント、「下院議員」を指す。これは州レベルでもおなじことである。

Dictionary of Russian Slang And Colloquial Expressions

Dictionary of Russian Slang And Colloquial Expressions

  • 作者: Vladimir Shlyakhov
  • 出版社/メーカー: Barrons Educational Series Inc
  • 発売日: 2006/02
  • メディア: ペーパーバック



A Russian-English Dictionary of Contemporary Slang: A Guide to the Living Language of Today

A Russian-English Dictionary of Contemporary Slang: A Guide to the Living Language of Today

  • 作者: UFO
  • 出版社/メーカー: Bramcote Pr
  • 発売日: 1996/09
  • メディア: ペーパーバック



面白いほどわかる! 新しいアメリカのしくみ

面白いほどわかる! 新しいアメリカのしくみ

  • 作者: 向江 龍治
  • 出版社/メーカー: 中経出版
  • 発売日: 2008/12/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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ことばの美学47 料理における危機的状況 その2 [雑記]

 前回、魚を煮るのにかつおだしは使わない、と書いた。これに煮たことが、西洋料理でもある。たとえば、ミネストローネには、ブイヨンやチキンスープを使ってはいけない。野菜が「だし」なのだから、その味をそこねないこと。オリーブオイルと塩のみを使う。これは有名なシェフのカルミネさんもいっていることだ。また、西洋には「スープはほほえむように作る」という諺がある、ぐらぐら煮立ててはいけない。火加減も料理ではだいじなことだ。寒い時期のミネストローネには、タマネギ、ニンジン、キャベツ、ジャガイモ、セロリ(葉も)、トマト、マジョラムを使う。調味料は塩と、最後にあらびきの胡椒だけ。
 つぎは肉などの煮込みのお話――。
 カレーやシチューの作り方で、最初に肉を炒めると書いてあるものが多いが、これは「肉」の味を逃がさない工夫で、逆に肉を「だし」にするのであれば、炒めないで、そのまま水からぶち込む。これだと、沸騰したときに一気に出るあくを一度取ればいいだけだ。それまで鍋についていないといけないが、あとは弱火にして、前述のように「ほほえむように」コトコトと気長に煮る。ついでながら、スーパーで「シチュー用」として売っているのは、そもそもが「切り落とし」であり、おなじ分量をカットしてもらうのよりも安い。紀伊国屋でラムのシチュー用(安い)が出たときに買って冷凍しておき、ニンジン、タマネギ、ジャガイモでシチューをこしらえることが多い。味付けは大目の塩とブーケガルニ、粒のままの胡椒だけ。あとでカレーにするという手もある。ジャガイモは皮を剥かずに、四つ切ぐらいにする。皮は盛り付けや食べるときに除けばいい。ニンジンはかならず泥つきにする。泥付きでないものは、機械で現われるときに皮がめくれてしまっているので、皮を剥く必要はない。
 料理の本には、正しくないことが書かれている場合もある。それから、記されている「分量」を当てにしてはいけない。味つけは、季節、気温、材料、体調、年齢などによって変えるべきものだからだ。さらに、濃い味付けは直せないが、薄ければ、好みに応じて、食卓で塩、胡椒などで直せばいい。そのためにそういったものがテーブルに出されるのだから。
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ことばの美学46 料理における危機的状況 その1 [雑記]

 高齢の母のもとへ、週何回かホームヘルパーが来るのだが、このひとたちは九割かた料理ができない。いや、おいしいものを作れるかどうかという話ではない。50~60代の女性が、料理の基本を知らないのだ。これでは日本は滅びる、と思う。「キャベツを大量の水から茹でる」「ブロッコリを丸ごと鍋に入れて茹でる」「カボチャが煮えていない(固くて食べられない)のを、固さは好みの問題といってはばからない」……等々。いっておくが、タダのボランティアではない。一定の料金を払い、それが介護保険によってまかなわれているのだ。いわば税金によって運営されているシステムの労働者なのである。そのスキルがこれでは……。
 日本料理のごく初歩的な原則のうち――
(1)根菜は水から調理、葉ものは熱湯でゆでる。
(2)魚を焼くときは身の側から、鳥は皮の側から(皮付きの場合)。
(3)卵を固めるのは塩であり、ふっくらさせるのは砂糖である。
(4)煮魚にかつおだしを用いてはいけない。また、醤油は色づけ程度にする。
――ぐらいは知っているのがあたりまえだ。それも知らず、よく半世紀主婦をやってこられたものだ。だいいち、ダンナや子供たちがかわいそうだ。なにも割烹のような料理を作る必要はない。季節の野菜や魚介を使って、簡単にできるものを、こしらえればいい。
     *      *
 ちなみに、きのう母のところへいってこしらえたのは、ありあわせの材料により、
(1)カラスガレイの煮付け――カレイ(切り身三つ)が隠れるくらいの深さの水に料理酒を大匙一杯、生姜の千切りをふり、煮え立ったところでアクをとり、あとは弱火で煮る。最後のほうに醤油を大匙一杯。(注)かつおだしを使わないのは、カレイはカレイの味で食べるため。これは常識。
(2)卵焼き――卵3つに砂糖小さじ3杯、塩少々。フライパンを熱して、油を充分に熱し、混ぜた卵をジャッと入れて、まわりから箸でスクランブルしながら、フライパンのいっぽうに押しつけて半月形にして、裏返す。
(3)ほうれん草のおひたし――洗ったほうれん草をラップでくるんで1分間チン。しょうゆではなくすりゴマをかける。いまの時期のほうれん草は甘くておいしいから、味付けはいらない。
(4)白菜がいっぱいあったので、ついでに甘酢漬けをこしらえた――白菜を適当な大きさに切り、ボウルに入れて塩をふり、くたくたになるまで手で揉む。しばらくほうっておき、出た水分を絞り捨て、甘酢であえ、ゴマ油少々をかける。翌日が食べごろ。
 いうはやすしでござるが、やってみなされ。


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ことばの美学45 たまには翻訳の話をしよう その2 [雑記]

1 まず、アラビア語の受動態について述べよう。一般に、アラビア語では、行為者がわかっているときには、受動態が使えない。
(例)「ハサンはウサマに殺された」は不可→「ウサマがハサンを殺した」としなければならない。ただし、ハサンがだれに殺されたのかわからない場合は、「ハサンは殺された」と受動態にできる。アラビア語では、「わたしは蚊に刺された」とはいえず、「蚊がわたしを刺した」となる。「蚊」が行為者だとわかっているからだ。
2 ひるがえって、英語で考えてみよう。死ぬはdieが一般的な言葉だろうが、「だれに殺されたのかはわからないが、戦争などで殺された」場合、ふつうdieは使わない。
(例)5000 U.S.soldiers were killed in Iraq.と、受動態にする。
3 しかしこれは、「殺された」ではなく、「死亡した」と訳すべきだろう。killedはbe killedという慣用の範疇で使われている。「イラクで5000人の米兵が殺された」よりは、「イラクで5000人の米兵が死亡した」という日本語のほうが座りがいい。
4 これにはどうも神の存在があるのではないか、という乱暴な仮説をあえて立ててみたい。もうひとつ例をあげよう。
(例)These srtuctures had to be designed to witstand winds up to 130 miles per hour.
(直訳)この構造物は、風速五八メートルの風に耐えるように、設計されていなければならない。
(日本語らしい訳)この構造物は、風速五八メートルの風に耐えるように、設計しなければならない。
☆風速はmile=1609メートルで換算。強烈な台風以上に相当。
5 もうひとつ
(例)My mother cooked me breakfast.「母は(わたしに)朝食をこしらえてくれた」
しかし、I was cooked breakfast by my mother.「(わたしは)母に朝食をこしらえてもらった」にはできない(行為者がわかっているから)。ただし、Pork should be thoroughly cooked.「豚肉にはちゃんと火を通しましょう」(ほら、自然と能動態になった!)は可能。
6 そうすると、ひとつの仮説が浮上する(いたって強引ではあるが)。
日本語:行為者なくして能動態にできるし、むしろそのほうが日本語らしい。
英語:行為者がわからないときは、いっそ受動態にしてしまう(orアラビア語のように、受動態になってしまう)。だって、行為というのは「他動詞」だから、主語がないときは受動態にするしかない。むろん、行為者がわかっていても受動態にできるところは、アラビア語とちがう。
7 われわれは(ことに翻訳者は)、英語の修辞法に慣れているせいか、日本語らしい文章を書くのを忘れがちになる。前回の人称代名詞の件もだが、英語的な発想を、知らず知らず日本語に取り入れている。それはそれでいいが、自覚する必要はあるだろう。



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