『レジェンド・ゼロ1985』鳴海章 [本・読書]
1980年代半ば、アメリカが核攻撃するのではないかと疑心暗鬼に陥ったソ連とアメリカが、核戦争の瀬戸際に達したことは、あまり知られていない。いわば第二のキューバ危機だった。この本はそんな時代を背景に、日本の航空自衛隊で長年活躍し、米軍パイロットをも感心させたF-4ファントム戦闘機とそのパイロットたちを描いている。さらに、核ミサイルを抱いたソ連の大型爆撃機Tu-95の搭乗員たちの人間模様も描かれ、アメリカ海軍空母のF-14トムキャットのパイロットたちも登場する。ダブル台風のなかで、三つ巴の戦い――ミサイルや機関砲の応酬はなくても、これは戦争なのだ――がくりひろげられる。第三次世界大戦が起きなかったのは歴史的事実だが、まるで操縦教範のような詳しい描写にうならされる。そして、結末に読者はほっとすることだろう……。「一発も撃たせるな」勝利はそこにしかない――という緊張感のもとで行動する空自のパイロットたちに乾杯!