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『アロの銃弾』『体制の犬たち』鳴海章 [本・読書]

「もっとも凶悪な獲物(ゲーム)。それが狙撃手(スナイパー)」という、ギャビン・ライアルの『もっとも危険なゲーム』をさせる惹句のとおり、この二冊は恐るべきスナイパーの攻防がひとつのテーマになっている。もうひとつの重要なテーマはAIだ。
 このレディスナイパー前編『アロの銃弾』では、まず“瀬取り”によって北陸に上陸した北朝鮮工作員との銃撃戦がくりひろげられる。警視庁公安部局を支援する外部秘密組織のスナイパー赫音が阻止行動にあたるが、日本側にも大きな人的損耗が生じた。
 いっぽうマニラでは、AIアプリAIKOを駆使するスナイパー亜呂は、たった独りでフィリピンの武装警官隊を阻止する。亜呂は所属する組織の命令で、赫音を斃すよう命じられた。両者は激突する運命にあった。だが、狩人【ハンター】が獲物【ゲーム】になる場合もあるのが、スナイパーの世界なのだ。後編『体制の犬たち』では、おそるべきスナイパーの最終ターゲットをめぐって、双方が暗闘と激闘を展開する。非対象戦の例に漏れず、攻撃する側が圧倒的に有利ななかで、日本側はモンスタースナイパーを阻止できるのか?
 学習能力を高めたAIは、自動運転車を暴走させることもできる。そうなると、アナログな装備のほうが、AIの攻撃を防御するのに適しているかもしれない……。
 こういったテロとの戦争は、現実に水面下で開始されているのではないか、と思わせる迫真の描写。現代を生きるものは、ここには書き切れないほどの情報が詰め込まれているこの二冊に、目を通すべきだろう。
 折しもSFの新刊『ウォーシップ・ガールズ』が届いた。こちらは「ミサイルの姿をした十四歳の少女(AI)」が活躍するようだ。「ぼく」という一人称は、レディスナイパーの登場人物とおなじ。ちょっと萌える(?)かも。




アロの銃弾: レディスナイパー前篇 (光文社文庫)

アロの銃弾: レディスナイパー前篇 (光文社文庫)

  • 作者: 章, 鳴海
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2020/01/08
  • メディア: 文庫



体制の犬たち レディスナイパー後篇 (光文社文庫)

体制の犬たち レディスナイパー後篇 (光文社文庫)

  • 作者: 鳴海 章
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2020/04/14
  • メディア: 文庫



ウォーシップ・ガール (創元SF文庫)

ウォーシップ・ガール (創元SF文庫)

  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2020/08/12
  • メディア: 文庫



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