ことばの美学66 原文と考証 [雑記]
NHKの考証をやっておられる知り合いがいて、時代ものなどで、いろいろ気をつけなければならないことについて、おもしろい本を書いている。翻訳、ことにノンフィクションではこの考証を欠かすことができない。数字などにあやまりがあれば訂正する。ところが、そうすうと「原文とちがう!」などと指摘されることもあり、これがなかなか悩ましい。じつは、たいがいの場合、原文というものは、そんなに正確とはかぎらない。有能な訳者は、つねに眉に唾をつけて原文を読んでいる。軍事ものではことに、武器装備などあらゆるものについてウラを取る。すると、「原文とちがう」ことは多々生じる。いってみれば「原文よりも正確」なのだ。フィクションでも原作者によって差がある。グレイマン・シリーズのマーク・グリーニーの描写はじつに正確で(このほうが珍しい)、訳していてとてもうれしいのだ。