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ことばの美学49 そのときにわからなかったことば その2 [雑記]

二冊目の訳書のポケミス『雇われ署長』は、原題をDead in the Waterという。この言葉が、最初はよく理解できなかった。風もなくて船が動きが取れなくなることがもとの意味で、それに「水中の死体」をひっかけているのだろうが、船は浮かんでいるのだからon the waterでは? というように考えてしまったのだ。しかし、そうではなく、船はお尻を水につけている(だからいつも濡れているから、sheという女性人称代名詞が使われるというのは俗説。小生がいったわけではない)。つまり、「水のなか」なのだ。それがわかるまでに、しばし時間を要した。ただ、これを訳す場合には、あくまで「水中」ではなく「水の上の」「水面の」ということになるだろう。
雪についても、それとおなじことがいえる。ビル・モンローが「雪に残る足跡」という歌を歌っているが、原題はFootprints in the Snowである。足跡は雪の表面に触れている(on)のではなく、雪に食い込んでいるから、inなのだ。しかし、これも「雪の中の足跡」と訳したら×――日本語では「雪の上の足跡」になる。ちなみに歌詞は以下のとおり。雪は地面に触れているだけなので、むろんon the groundとなっている。
I traced her little footprints in the snow
I found her little footprints in the snow
I bless that happy day when Nellie lost her way
For I found her when the snow was on the ground

雇われ署長―署長ベネット (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1456)

雇われ署長―署長ベネット (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1456)

  • 作者: テッド・ウッド
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 1985/09
  • メディア: 新書



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