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『中国の大盗賊 完全版』高島俊男 [本・読書]

 ちょっと前に読んでいたのを、今回の事件を機にひっぱりだしてきた。社会主義制度が破産すれば、共産党独裁の国家はつぶれるはずだが、中国はそうではなかった。それどころか、共産党主導で資本主義経済に移行した。著者はいう――してみると、中国の共産党は……その本質は共産党ではなかったのである。では何であったのkといえば、権力を奪取して自分たちの王朝を打ちたてようとする集団だったのだ。
 また、中国における「国家」はステイトではなく、「皇帝とその統治機構を指す語である」という。「(中国の)共産党国家が昔の王朝国家とちがうのは、皇帝(党の総書記が世襲でないことだが、事実は集団指導なのだから、これはそれほど大きなちがいではない」……「いまにつづきかつ繁栄する鄧小平の中国は、毛沢東の中国とは別の王朝である。永楽帝以後の明帝国が太宗洪武帝の明帝国とは別の王朝であるように……しかし、初代皇帝毛沢東の最大の願いが自分がうちたて国家の安泰と存続にあるならば……三代皇帝鄧小平こそ創業皇帝の最大の忠臣である……。
 なかなか含蓄に富んだ言葉がならんでいる。ところで、今回の船長解放騒動だが、これは外交上の敗北などではありえない。むしろ逆で、恥をかいたのは中国のほうだろう。首相という地位にある人間が、雑魚である漁船船長の解放を「要求」し、こちらが地方の官憲レベルでそれに応じたという構図を考えてみるといい。首相の「要求」というのは、国家レベルの視点で考えるなら、「懇願」にひとしい。アメリカ大統領ならそんなことをするだろうか? ありえない。解放されないとよっぽど困るのか、それともどうしても大きな外交問題にしたかったのだろう。中国首相は明らかにドジを踏んだといえる。北京のデモ人数が50人程度ということからも、中国国民がこれを重視していないことがわかる。だいたいマスコミは、どうして北京で街頭インタビューをするのか。顔が映るような状況で、中国国民が正直な発言をするはずがない。解放されたのをいいことに中国漁船が押し寄せるという観測も当たらないだろう。「逮捕」という前例は、つぎの「逮捕」もありうることを示しているからだ。漁船の側は(合理的な人間であれば)そう考える。いわば、初犯なので許してやった、というところだ。
 物事はつねに裏からも眺めるべきだという好例。

中国の大盗賊・完全版 (講談社現代新書)

中国の大盗賊・完全版 (講談社現代新書)

  • 作者: 高島 俊男
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2004/10/19
  • メディア: 新書



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