〈もののけ姫〉 [映画]
宮崎駿の映画は、それほどシリアスには見ていない。というのも、子供向けのようでいて、オトナが見ると凝ったところが目に付いてしまうからだ。それは欠点ではないが、「ちょっと待て」と考えてしまうので、あまり娯楽として楽しめなくなってしまうのが、オトナの悲しいさがだろう。
たとえば〈紅の豚〉の飛行機の空の葬列は、ロアルド・ダールの短編からヒントを得たものだろう。ちなみに、ダールの短編集『飛行士たちの話』では、この短編の題を「彼らは年をとらない」としているが、アンソロジー『翼を愛した男たち』の拙訳では「彼らは永らえず」とした。
前置きが長くなったが、この〈もののけ姫〉にも、わかる人にはわかるヒントが多数隠されている。中世の風景(人間も含めた)を見たくて見たのだが、たたら場で「てっぽう」を製造しているのは、ハンセン氏病に冒されたひとびとである。そのてっぽうを撃つ集団は、柿色の衣を着て、顔を隠している。これは非人であるだろう。犬(おおかみ)や猪が、森の神を象徴しているのは、いうまでもない。もののけ姫は森であり、たたら場は森を侵す文明だから、この二者は対立しているのだが、そこに第三勢力が登場してはじめて、両者は共存しなければならないことを悟る。
いま、環境問題という重いテーマの本を訳しているのだが、ちょっとした息抜きになるとともに、深く考えさせられる作品だった。なお、中世の風景、河原のひとびとについてのビジュアルな資料としては、司修のこの絵本がすばらしい。いわば現代の絵巻物であろうか。つくづく眺めていたい本である。
こうしたまつろわぬ民については、いずれべつに項目を立てて書こう。
たとえば〈紅の豚〉の飛行機の空の葬列は、ロアルド・ダールの短編からヒントを得たものだろう。ちなみに、ダールの短編集『飛行士たちの話』では、この短編の題を「彼らは年をとらない」としているが、アンソロジー『翼を愛した男たち』の拙訳では「彼らは永らえず」とした。
前置きが長くなったが、この〈もののけ姫〉にも、わかる人にはわかるヒントが多数隠されている。中世の風景(人間も含めた)を見たくて見たのだが、たたら場で「てっぽう」を製造しているのは、ハンセン氏病に冒されたひとびとである。そのてっぽうを撃つ集団は、柿色の衣を着て、顔を隠している。これは非人であるだろう。犬(おおかみ)や猪が、森の神を象徴しているのは、いうまでもない。もののけ姫は森であり、たたら場は森を侵す文明だから、この二者は対立しているのだが、そこに第三勢力が登場してはじめて、両者は共存しなければならないことを悟る。
いま、環境問題という重いテーマの本を訳しているのだが、ちょっとした息抜きになるとともに、深く考えさせられる作品だった。なお、中世の風景、河原のひとびとについてのビジュアルな資料としては、司修のこの絵本がすばらしい。いわば現代の絵巻物であろうか。つくづく眺めていたい本である。
こうしたまつろわぬ民については、いずれべつに項目を立てて書こう。
河原にできた中世の町―へんれきする人びとの集まるところ (歴史を旅する絵本)
- 作者: 網野 善彦
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1988/09
- メディア: -