『ムーンレイカー』『ダイヤモンドは永遠に』 [本・読書]
007号シリーズ第3作『ムーンレイカー』には、億万長者なのにたかがクラブのブリッジでいかさまをやる人物が登場する。これを不審に思ったクラブの関係者がMに調査を依頼し、ボンドが勝負して、いかさまをあばく。それが発端で、この人物がとんでもない悪党であることが徐々にわかってくる。小さな悪を平気でやる人間は、ひそかにそれよりも大きな犯罪を犯しているという人生の実相は、『ヤング・ボンド』でもストーリーの骨になっている。『ムーンレイカー』では、ボンドは初代のベントレーをおしゃかにして、ベントレーは53年型の二台目になる。
第4作『ダイヤモンドは永遠に』はアメリカがおもな舞台で、『死ぬのは奴らだ』で大怪我を追ったCIA局員レイターが、こんどはピンカートンの探偵として登場、ボンドとタッグを組む。冒頭、サソリが出てくるが、フレミングはこうした不気味な生物の使い方もうまい。『ヤング・ボンド』第1作ではウナギだったが、第2作では? それは訳書が出てからのお楽しみ。