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『香乱記』 [本・読書]

 小説を読みかけで投げ出すことは、ほとんどないのだが、『三国志』北方謙三は、まったくおもしろくなく、せっかく文庫で全巻そろえたのだが、ヤフオクにでも出そうかと思っている。理由ははっきりしている。劉邦にもその周辺の人物にも、まったく共感をおぼえないのだ。さらにその原因が、本書を読むとはっきりとわかった。
 劉邦は、あくどい奸策で版図をひろげてゆく。信義もへったくれもあったものではない。項羽はその点、やや甘かったかもしれないが、やはり降伏した敵兵を生き埋めにして殺すなど、残虐のかぎりを尽くしている。始皇帝も残虐だったが、歴史というフィルターを経ても、こうした蛮行は消えるものではない。
『香乱記』の主人公田横は、こうした時代にあってもひとつの理想を貫いて、斉という国を安定させ、守ってゆこうとした。作者は「秦末の最終勝者は劉邦にはちがいないが、後世の人々の精神風土のなかで劉邦はほんとうに輝きつづけているのか。項羽と田横がそこに投げかけた影は、じつは光よりも勝っているのではないか」と問いかける。
 宮城谷昌光の作品のなかでも好きなもののひとつに数えられる。こうなると全集がほしくなってきた。

香乱記〈1〉

香乱記〈1〉

  • 作者: 宮城谷 昌光
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2006/03
  • メディア: 文庫


香乱記〈2〉

香乱記〈2〉

  • 作者: 宮城谷 昌光
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2006/03
  • メディア: 文庫


香乱記〈3〉

香乱記〈3〉

  • 作者: 宮城谷 昌光
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2006/04
  • メディア: 文庫


香乱記〈4〉

香乱記〈4〉

  • 作者: 宮城谷 昌光
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2006/04
  • メディア: 文庫


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