10歳から100歳までできる英語のおべんきょう(1) [英語]
前に翻訳学校で教えていて、とにかく基礎ができていない生徒が多いと感じた。
文法や構文はもとより、英語とはなんであるかということがわかっていない。ひとつには学校の教え方の問題もあるが、学ぶ側が「語学」という言葉のクモの巣にとらわれているからだろう。言葉はそれを使う文化のなかから生まれるものだから、その文化を理解しないで言葉だけをおぼえようとするのは難しい。
ここでは、英語に初級も上級もへったくれもない、という考えかたで、その基礎をじわじわと語ってゆきたいと思う。対象年齢は漢字があるていど読める範囲――10歳から100歳までとしよう。
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では、ひとつクイズを出そう。
つぎの言葉はどう読むでしょう――「自然」
答はふたつある――「しぜん」「じねん」
前者は「漢音」、後者は「呉音」で、日本の漢字の読みかたには、まずこの二種類があることを意識しておかなければならない。日本人なら、どんな人間(ニン・ケン=呉音)でも自然(シ・ゼン=漢音)とつかいわけているわけだが、言葉が大陸から伝わってきた時代や背景によって、こういうちがいが生じている。
英語にもおなじような現象がある。たとえば、豚はpigだが、豚肉はporkという。羊はsheep、羊肉はmutton、牛はcow、牛肉はbeef……なぜだろう? イギリスに先住していたアングロサクソン人は、pig、sheep、cowのもとになる言葉を使っていた(picga→pigなど)が、侵略者のノルマン人がそこにpork、mutton、beefという古期フランス語を持ち込んだ。征服されたアングロサクソン人は、農場では以前とおなじ言葉を使いつづけ、ノルマン人の調理場ではノルマン人の言葉を使った。それで、家畜pigと肉porkの使い分けがなされるようになった、といわれている。
11世紀後半からイギリスを支配した支配階級(ノルマンジー公ウィリアムら)の言葉が、こうして大量に英語にはいりこんだ。さらに、母音の発音が15~16世紀にかけて大幅に変わった。それ以前はローマ字読みだったのだが、現在のような音になった。しかし、つづりは容易には変えられないので、つづりのほうはそのままになった。ローマ字を習ってから英語を習うと混乱するのは、このためである。
どうです? 英語と日本語は似たところがあるでしょう?
あまり長くなると、頭が疲れるので、今回はこれにて。