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『フラット化する世界』と「読書ノススメ」 [雑記]

 10月13日日経夕刊「あすへの話題」に、児玉清氏が、振り込め詐欺のような不自然な話に疑うこともなくひっかかる素朴・幼稚さは、読書離れの激しいわが国の特徴的傾向ではないか、といった趣旨のことを書いておられる。
 本を読むということは、けっして頭でっかちになることではなく、想像力を育て、実社会を垣間見ることでもある。ディケンズを読めば、悪いやつらがごろごろいて正直者は騙されるという都会のおそろしさがわかる。シェイクスピアを読めば遺産相続で揉めるのはどの時代でもおなじだったとわかる。男の嫉妬の怖さもわかる。赤頭巾ちゃんを読めば、だれだって悪い狼には気をつけようとするだろう。暗い森をひとりで歩いてはいけないのだ。
 それに、本を読むことは、夢や大望を抱き、それを実現する具体的な方法を考えることにも結びつく。つらいときには、心を慰めてくれる。悪いやつらは最後には叩きのめされ、不遇だった主人公は最後に美しいお姫様と結ばれる。灰をかぶっていた娘は王子様のお妃になる。それを信じてこそ、苦労に耐え、努力する気概が持てる。
 拙訳『フラット化する世界』も、イマジネーションの大切さや、夢が持てる社会の重要さを説いている。イマジネーションを育てるのは、物語――その民族の口承である。さらにいえば、そこに普遍的な価値観を加味するのは、世界に共通する物語だろう。
『フラット化する世界』はおかげさまで好評で、版を重ねているが、これはたんなる経済書、グローバリゼーションを描いた本ではない。世界のひとびとの日々の暮らしを豊かにすることに結びつくヒントが書かれている。どんな職業であろうと、コモディティ化しないためには、イマジネーションや工夫が必要なのだ。あらゆるものごとに経済の動きが影響をあたえているいま、生き延びてゆくために必読の書なのである。

フラット化する世界(上)

フラット化する世界(上)

  • 作者: トーマス・フリードマン
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
  • 発売日: 2006/05/25
  • メディア: 単行本


フラット化する世界(下)

フラット化する世界(下)

  • 作者: トーマス・フリードマン
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
  • 発売日: 2006/05/25
  • メディア: 単行本


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