1世紀と21世紀 [翻訳]
ここのところ、新約聖書の時代とグローバリゼーションの時代を行き来していて、いささか「時差ぼけ」の状態。どちらも5月に刊行される予定だが、かなりおもしろい本なので、ちょっと紹介しておこう。
1世紀のほうはThe Jusus Dynasty by James D. Tabor――歴史上の実在の人物としてのイエス・キリストを、考古・書誌・古文書といったさまざまな分野の学問を通じて解明しようとする。といっても、トンデモ本という評判がいよいよ高くなっている「ダ・ヴィンチ・コード」に対する「反ダ・ヴィンチ・コード」本ではない。聖書に描かれていることをもとに、緻密かつ客観的に検証している。長年の研究の成果である。学者の書いた本ではあるが、けっして読みにくくはない。読み物としてもおもしろいし、図版も多く、まとまりもよい。『聖書を歩く』の訳者黒川由美さんに後半を手伝ってもらった。原書はそろそろ手にはいると思う。
21世紀のほうはThe World Is Flat by Thomas Friedman――大ベストセラー『レクサスとオリーブの木』の著者フリードマンが、グローバリゼーションと世界のフラット化について綿密な理論をくりひろげている。昨年出たばかりの第1版を改訂増補したもの。100ページ以上増えて、内容も大幅にあらためられている。
この本は、インターネットによって個人がビジネスの世界でも大きな力を持つようになり、なおかつ通信インフラの整備によって、モノではなく知識のアウトソーシングも可能になった現在、政府関係者や企業人ばかりではなく、個人もどう繁栄してゆくかを考えるうえで必読の書となるだろう。
原書は、あわてて第1版を買わず、新版が出るのを待つこと。
The World Is Flat: A Brief History Of The Twenty-first Century
- 作者: Thomas L. Friedman
- 出版社/メーカー: Farrar Straus & Giroux (T)
- 発売日: 2005/04/05
- メディア: ハードカバー